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翼の記憶 -追憶編-
【ファンタジー 恋愛小説】

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大好きなお父様V-1

その小さな手でカップを傾けているアオイの手元から、そっと手をあてて温度を確かめているキュリオ。






「・・・おとうちゃま?」






不思議そうにキュリオを見上げているアオイに視線を落とし、キュリオは小さく頷いた。






「これならアオイが飲んでも熱くはないね」






見つめあって微笑むキュリオとアオイをみて、中年の男性が目じりを下げて笑っている。





「キュリオ様は姫様が愛しくてしょうがないのですなぁ」






「あぁ、アオイは・・・私の全てだ」






かつてのキュリオならば、たったひとりに対して特別に愛情を注ぐことはせず、このように微笑むことはなかった。





数奇な運命が重なり、この小さなアオイがキュリオのもとに来てからというもの彼の何かが少しずつ変わっていった。






だが、その変化に彼は違和感を覚えるどころか・・・心地よくさえ思っている。






初めて感じるほのかな愛情を手にしたキュリオは、想いのままに身と心をまかせ・・・アオイへと深い愛情を注いでいった。






ほどなくして・・・


バタバタと廊下を走る元気な足音が響いた。





それまでキュリオの隣でミルクを口にしていたアオイが、そのカップを置き扉にかけよった。





コンコン





「キュリオ様、お話し中失礼いたします!」






聞きなれた声の人物に、キュリオは入るよう促すと・・・






「キュリオ様、アオイ様をお見かけ・・・・」






最後の言葉を発する前に、右手に何かがまとわりつく感触を感じた彼はその正体に目を丸くした。





「・・・アオイ様!!」





「カイーッ!!」






金髪の髪に少年のようなキラキラした瞳をもつ彼は、名をカイという。生粋の剣士で、悠久の王であるキュリオと、その娘のアオイを護衛する立場にある。だが、現在となってはアオイの良き遊び相手であり、世話係といったほうがよいだろう。





屈託のない笑みを浮かべるアオイを大事そうに抱えたカイは・・・






「アオイ様・・・おひとりで出歩いてはいけないとあれほど・・・」






口では説教染みたことを言っているが、カイの瞳はとても優しく、この姫を溺愛している様子がうかがえる。





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