決意の夜-1
冷酷な勝雅の仕打ち。秘裂から溢れた愛液が、履き替えてきたばかりのショーツを濡らしている感覚があった。
紗綾は養父・勝雅から解放されて、夕食を摂っていた。
(嘘っぱち。愛なんて嘘っぱちだ)
デミグラスソースの残り滓が付着したお皿がテーブルの向こう側にあった。先程まで一緒に食事していた勝雅の皿だ。養父は肉汁たっぷりの特大ハンバーグをぺろりとたいらげて、出ていった。
煙草臭い唇でキスされて、咽せそうになった。今夜また、煙草と肉汁が臭う口を押しつけられることになるのか。
廊下で話し声がする。勝雅と美和(高校二年)が話しているのだろう。内容までは聞き取れないが、自分についての事かもしれない。
足音が近づいてきた。
美和だった。
キッチンに入ってきた美和は、紗綾にチラッと視線を送ってから、流し台に向かった。
ショートボブの髪、丸みのある顔、パッチリとした瞳。緑地公園で、紗綾と竹中の様子を窺っていたのは、美和に違いない。
「風邪、引いちゃった…。心もね」
美和は、コップに水を汲んで、錠剤を口に入れると、ごっくんと水で流し込んだ。
「親父に何されたの?」
「何って……」
「顔が引きつっている…。今、言えないことされたんだ」
「訊かないでください」
「ああ、そう…。エッチなことされたんでしょう。親父、言ってた…。復讐してやったって…」
「復讐って…」
「おまえの代わりに復讐してやったって言ってた…」
紗綾は黙っていた。
「何か言うことあるでしょう? 泥棒猫ちゃん…」
「泥棒って?」
「とぼけるのはやめなよ」