決意の夜-4
「ちょっと待ってね」
美恵子はクローゼットの下の引き出しから、白い衣類を取り出した。
「新婚当時に着ていたネグリジェよ。きれいに洗ってあるから…。さーちゃんにあげる」
紗綾は両手で純白ネグリジェを受け取った。
「お母さん……」
「なに?」
「助けてください…」
「また、そんな声だして…。辛気臭い。泣き言はやめなさい」
「だって…わたし、怖い…」
「さーちゃん、私だって辛いのよ。お父さんがあなたを抱くなんて、辛い…。辛くて気が狂いそうになってる……。だけど、我慢してるのよ…。わかって…。これはどうしようもないことなの…」
「お母さん……」
「私はお母さんじゃない。知ってるでしょう? 頼られても困るのよ…。さあ、お父さんの部屋に行きなさい。もし、あなたが逃げ出したら、私は殺されるかもしれないの。さあ、そのネグリジェを持って、お父さんのもとに行きなさい」
今まで見たことのない目をしていた。鬼神が乗り移ったような美恵子の目に射抜かれそうになり、紗綾の心は震えた。
養父に抱かれることは避けられない運命なんだ。美恵子の部屋を出た紗綾は自らに言いきかせた。