不可抗力だもんね-23
考えてみればここは、性に悩む女性がそれを克服するために住まう特別治療棟。
僕はその専属カウンセラーとして彼女達の悩みを聞いたり、
時にその異常なまでの性欲を抑制してあげるお手伝いをしているのだ。
もし、彼女達が自慰では抑えきれず、性交渉によってそれを解消したいと望んだら、
果たして僕はどう応えてあげればいいのだろうか?
「あれ? それを言ったら美咲さんは最初から性交渉を望んでますよね?」
「うんっ♪ だから和也がどうしてもSEXでなきゃ駄目だと判断したら、
いつでも私を抱いてくれていいんだよ?」
「いや、大丈夫です。
そんな事しなくても充分美咲さんを満足させていると思いますから。」
「うぐぅ………… そうなんだよねぇ………… ホントこの指が憎らしいわ…………」
美咲さんは僕の手を握り、恨めしそうにそれを見つめていた。
「ま、ようはそうやって和也が満足させられるウチはいいんだけどね…………
欲求は常に高みを望んでしまうものだからさ、
もしかするとそれだけでは物足りない日が来るかもって事よ…………」
なるほど、言ってる意味はなんとなくわかった。
けれど、それならば最初から秋子さんも、
そうなる日が来るのをわかっていた筈だろうに………… なんで…………
「なんで秋子さんは『性交渉は禁止』なんて御法度を作ったんでしょう?」
「うん?」
「だっていずれクランケがそれを求めるなんてわかっていた事でしょ?
なのになんで性交渉すると退寮だなんて…………」
「馬鹿ね? はじめからSEXもOKなんて言ったら自己抑制にならないでしょ?」
僕はあっさり論破された。
そうだ、ここは異常なまでの性的欲求を自力で抑制すべきための場所だった。
最初からフリーダムになんでもありならば、それは抑制ではなく許容だ。
「ついでに言うと、その考えが先輩と対局する私のアプローチね♪」
ああ、どうやら僕はすっかり頭に血が昇っていたみたいだ。
どうして秋子さんは、僕が他の人とSEXする事をやむなしとするのか、
そればかり考えていたけど…………
「そうか…… この話ってあくまでこの寮にすむ誰かとって話なんですね…………」
「うん? そう言わなかったっけ? あくまでカウンセリングとしての意味だよ?」
「誰でも彼でもってわけじゃなくて………… あくまでクランケとの…………」
「あれ? ひょっとして君は世の女すべてに適応されるとでも思ったの?」
「え、いや………… それは…………」
「そんな事してみなさい? きっと君のコレは先輩にナマスに刻まれてしまうわよ?」
「……………………ですよね」