枯れた花(NARUTO同人/斬白)-1
『枯れた花にも出来る事。
ソレは貴方の幸せを願う事。
枯れた花にも出来る事。
ソレは貴方の為に死ぬる事。』
明るい朝の陽射し。眩し気に目を細めながら白は香草を摘んでいた。
時折口づさむ歌は、白のお気に入りである名前も知らない謡人の唄。
『絶えよ 命 と願うては
ツギハギ 今だに
絶えません
絶えよ 想い と願うては
あさまし 想いが
募ります』
本来ならば当に失っている命。狭い、暗い牢獄の中、『感情』や『孤独』といった全ての感覚は麻痺していた。
その頃の自分は既に慰み者と化し、自分でももうどうでも良くなっていた。
(神様…ボクはいつ死ねるのでしょうか…)
物心ついた頃にはもう、願っていた。
(この命早く絶えよ―‐)
手足に繋がれた鎖を握り締めては自殺を謀ろうとした。
だが、出来なかった。恐い訳でも畏れた訳でもなく、「何故」か。
無意識に願っていたのかもしれない。“誰かがココから連れ出してくれる”“自分はその方の為に生きる”のだと。
『水が欲しい等とは
望みません
土が欲しい等とは
望みません
ただ貴方の手で
手折られたい』
白は笑みを絶やす事なく歌い続けた。自然、肩に寄って来た小鳥の喉元を撫でると、香草の入った籠を持って立ち上がる。
不意に頭上の陽射しが止み、逃げ様とした肩の鳥は羽音を残して地面へと倒れた。
だが白は気に止める事なく鳥を拾い上げる。そのまま小鳥の刀傷を撫でながら上を見上げ、笑みを浮かべた。
「せっかく遊びにいらしてたのに可哀相じゃないですか。」
「呼んだのに来なかったお前が悪いんだろうが。」
「フフ…気付きませんでした。」
「今から出掛けるぞ…。お前も来い。」
「おや、どこにですか?」
「なぁに、簡単な仕事だ。ある事に関わってるクソジジイを殺すだけだからな。」
「そのぐらいでしたら、ザブザさんお一人でも良いのでは?」
珍しく仕事に自分を伴うザブザに首を傾げる。だが、ザブザは包帯の下から垣間見える薄い唇を引き伸ばし、舌舐めずりをしていた。
白は知っていた。こういう時の彼は血に飢えているのだ。それも、とびっきり上物な『血』。
「もしかしたら“大きな獲物”が釣れるかもしれないだろう…?例えば木の葉上忍…とかな。」
「フフ…楽しそうですね。」
ザブザは口元を隠す様に微笑む白の顎を持ち上げ、問い掛ける。
「…来るだろ…?」
有無を言わせぬ彼独特の問い。それに対して白はにっこりと笑みを浮かべて頷き、その手に自身の手を添える。
「ええ、ボクは貴方の弾避けですから。」
手を離し、背を向けたザブザの後ろに付き従い、白は後を追う。
その場に横たわる鳥を哀れむ暇は無い。何故なら進む先は常にこの背中だから。
『肥が欲しい等とは
望みません
光が欲しい等とは
望みません
ただ貴方の野望の
糧であれ』
〜Fin〜