私にも気持ちいいこと教えて下さい-1
時刻は六時三十分───目覚めるとすでにそこには秋子さんの姿は無かった。
呆然と寝ぼけ眼で部屋の様子を見渡しながら、
なんとなく昨晩の出来事を思い返す僕。
ゴミ箱をのぞくと、そこには確かに昨晩の情事の形跡が見受けられるが、
あの暖かな温もりは何処へ、ひとり冷えたベッドでたたずみながら、
白衣が見あたらないのを確認した僕はようやく状況を飲み込んだ。
(そうか………… 秋子さんはもう出掛けちゃったのか…………)
職場は目と鼻の先だと言うのに秋子さんの朝はとても早い。
接客するのに寝ぼけ眼では申し訳が立たないと言う理由もさながら、
その実、クランケの悩みをひとつでも多く解決するため、
昼夜問わずその対策に明け暮れているからに他ならないのだ。
(まったく………… どっちが仕事熱心な事やら…………)
その姿勢に感心しながらも、どこか押し寄せる寂しさにやるせない気持ちになる僕。
けれども下半身丸出しで、見事なまでに陰茎をそそり立たせているこの状態では、
それもただ虚しさを誘うばかりだ。
(はぁっ…… 生理現象とは言えどなんとも締まらない恰好だな…………)
毎朝の事ではあるが、昨日の今日でも変わらず元気な自分の体が、
妙に節操がないように思えて恨めしい。
昨日あれほど大量に吐き出したはずなのに、
目が冷めるや、まるで何事も無かったかのようなこの状態、
もしかして僕は僕が思っている以上に精力が強いのだろうか?
(こんな姿を秋子さんが見たら幻滅しちゃうかな…………
いや、むしろ『なんだ?私を誘っているのか?』なんて言っては、
嬉々としてこっちが襲われてしまうんじゃないだろうか?)
僕はそんな事を考えながら、思わずひとり笑ってしまった。
しばらくそんな妄想を繰り返していた僕だが、
いつまでもこんな時間を過ごしていても仕方が無い。
(せっかく早起きしたんだし、とりあえず庭の掃除でもするか…………)
僕は重い腰をあげ着替えをすませると、
管理人室を出てゆっくりと庭へと足を向けた。