第二部 超能力者-2
大室はフラつく。
「く、そが…。」
宮内は神奈に金属バットで不意打ちを掛ける。
しかし神奈は金属バットが自分の頭に命中する直前でそれを睨み付け、目を大きく見開く。
次の瞬間、宮内の金属バットの先端にひびが入り、折れる。
神奈は少し顔から汗を流し、そのまま宮内に殴り掛かる。
宮内は躱すが、予想以上に素早い神奈の動きに脇腹を蹴られ、蹴り倒される。
「チッ。」
真十は彼女を見て思う。
(すっげえ…、何だよあの子…。何であんなにつえーんだ?格闘技でもしてたのかな…?
それにあのバット急に…折れたよな…?)
大室は大声で叫び、神奈に立ちはだかる。
「あぁああああ‼」
神奈は息を漏らし、疲れた感じのまま構える。
宮内は身体を起こし、考える。
(やっぱり力はあんま強くねえ…。所詮女の力だ…。
けどどうなってる?さっきは確実にあの女目掛けてバットを振り下ろした…。だが急に折れやがった…。)
そう思い、折れた金属バットを見る。
(たまたまじゃねえ…。コイツの仕業か?)
大室は神奈に「殺す!」と宣言して、立ち向かう。
神奈は先手を打ち、近付いて来た大室の腹を殴る。
しかし大室は痛みを堪え、神奈の頬を殴る。
「オラァア!」
神奈は殴り倒される。
大室は彼女に近付く。
神奈は口から血を流し、立ち上がろうとする。
だが大室はその神奈を容赦無く再び殴る。
神奈は地面に叩き付けられる。
真十は彼女の危機を察し、叫ぶ。
「オイ、止めろ!」
大室は真十に言う。
「バァーカ、止めるかよ。」
神奈は身体を起こそうとしながら大室を睨み付ける。
大室はその彼女の態度を見て、激怒し、彼女の腹を蹴り始める。
「何だその目は?
あ?」
神奈は痛みで抵抗出来ずにいた。
大室は爆笑しながら彼女の腹を蹴り続ける。
「クッハッハッハッハッハッハッハッハッハッハッハ!
どうだコラ!あ?糞女っ、死ねっ、死ねっ、死ねっ!」
神奈は痛みで涙を流し、口から唾液を出す。
「カハッ…。」
真十は彼女の姿を見兼ねる。
(糞…、何でこんな事になってんだよ…。
このままじゃあの子…ホントに…)
神奈は痛みで涙を浮かべる。
その彼女の苦しそうな声を聞いた真十は、彼女を助ける為、大室に立ち向おうとする。
しかし宮内に邪魔される。
真十はそのまま宮内に突っ込む。
「アァアアアアアアッ!」
そして宮内に殴り掛かる。
だが宮内はその攻撃を簡単に躱し、逆に腹を殴る。
真十は痛みで腹を両手で押さえ、両膝を地面に付ける。
宮内は微笑して言う。
「弱い、弱い…。こんなんで俺等倒せると思うのかよ。」
大室は爆笑しながら神奈の腹を蹴り続ける。
「ハッハッハッハッハッハッハッハッハッハ!」
神奈は抵抗力を完全に失い、気を失う。
(駄目だ…あたし…。こんな奴等に…負けちゃうのか…?)
大室は神奈を蹴りながら気絶した彼女を見て、言う。
「何だコイツ、動かなくなったぞオイ!そろそろやべーんじゃねえか?」
真十はそれを聞いて立ち上がる。
宮内は彼に言う。
「お前…どんな殺され方…されたい?」
真十は彼の問いを無視して再び殴り掛かる。
宮内は再び躱し、片膝で彼の腹を蹴り、彼の髪の毛を掴む。
「そろそろ死ねよ、餓鬼…。」
真十は思う。
(すっげえ痛えけど、あの子はもっと痛い思いしてる…。男の俺がここでくたばる訳には行けねえ…。
ぜってえに負けねえ!)
そして宮内の鼻に思いっきり頭突きする。
宮内は真十の髪の毛を離し、激痛の走った鼻を両手で押さえる。
「いってえー!」
真十はその隙に大室に立ち向かう。
「うぉおおおおおおお!」
そして神奈を蹴る事に夢中になっていた大室の頬を殴る。
大室はその衝撃で尻餅を付く。
真十は何とか神奈を救出し、心配する。
「おい、大丈夫か?しっかりしろって!」
神奈は気が付き、薄目を開く。
「良かった…。」
大室は怒鳴る。
「この糞餓鬼ィー‼」
宮内は鼻の痛みも収まり、鼻血を服の裾で拭き取る。
真十は目を覚ました神奈に言い、立ち上がる。
「逃げて…くれ…。俺が…コイツ等…何とかすっから…。」
そう言い、大室に立ちはだかる。
しかし彼の全身は震えていた。
(やっべぇー、何かすっげぇカッコ付けちまった…。俺馬鹿だー…。
こんな奴にさしでやって勝てんのか?俺喧嘩の経験ゼロだぞオイ…。)
大室は宮内に言う。
「オイ、拓也!そろそろこいつ等殺して良いか?もう我慢がおさまんねえ…。」
宮内は答える。
「あー良いよ、そろそろ殺せ…。」
「こいつ等二人とも俺が貰うぜ。」
そう言うと大室はポケットから小型ナイフを取り出し、微笑する。
「オイ餓鬼…、今からおめえの皮膚…全部剥がしてやるよ…。」
真十は恐怖して固まってしまう。
(やべえ俺殺されちまう…。何がラッキーだよ…。最悪じゃねえか…。)
大室はゆっくりと真十に近付く。
真十は動けずに思う。
(チックショー、最後まで童貞で終わんのか俺…?一回だけで良いからしたかったな〜…。この子助けたんだからこの子と遣りたかった…。
てか死ぬって時に何考えてんだ俺…?あ〜死ぬのこえー!)
大室は小型ナイフを持って真十に急接近する。
しかしその最中、神奈は真十の右腕の袖をギュッと握る。
真十は彼女を見る。
しかしその瞬間、真十の目の前には小型ナイフを振り上げていた大室がいた。
神奈は目を見開く。
そして大室は吹き飛び、その先の壁に激突し、頭から血を流す。
真十は動揺する。
(は?何…今の?助かったのか?)
神奈はフラつきながら立ち上がる。
真十は彼女を心配する。
「なあ、立ち上がって、大丈夫か?」
しかし彼女はフラついていたので、肩を貸す。
「こっから逃げるぞ…。」
宮内は唖然としていた。