和也が求めるなら何だってするぞ?-1
(やっぱりこの時間じゃまだ帰ってないか…………)
時計は十時をまわろうかという頃───管理人室にはまだ灯りがついていない。
本来この管理人室は、管理人である僕の部屋となるべき場所だが、
僕には僕で専用の個室が用意されているので昼間は使っていない。
この部屋が使われるのは深夜のみ、
つまりここは、大家たる秋子さんと僕の寝室となっているのだ。
鍵を開け中に入るも、当然ながら誰もいない。
僕は電気をつけ、そのままベッドに体を投げ出すと、
ぼんやりと今日一日の出来事を思い返していた。
(夕方までは平穏だったんだけどなぁ………… 雪菜ちゃんが来て雫ちゃんが来て……
風音ちゃんと言い争ったり美咲さんの話を聞いたり…………
さすがにお風呂場で風音ちゃんと遭遇するなんてのは想定外だったなぁ…………)
わずか数時間の間に、四人もの女性と接するのはいささか骨が折れる。
もちろん専属カウンセラーとしてここの管理人をしている以上、
それはまぎれもなく僕のすべき役割なのはわかっているけれど、
思いのほか今日はいつもにも増して疲労感が大きく、
気がつくと僕はいつのまにか目を閉じうとうとと眠りに落ちていた。
「ただいま和也………… うん?なんだ眠っているのか…………」
どれくらいの時間が過ぎたのか、どこからともなく秋子さんの声が聞こえる。
僕はうっすらと目を開け部屋の様子をうかがうと、
白衣を着た秋子さんが、部屋の隅で着替えをしている姿が見えた。
長い白衣をハンガーに掛けたかと思うと、
腰に手をかけ、すとんと床にスカートを落とす。
ストッキング越しに透けて見える下着は純白、
圧迫されはち切れそうな太股が大人の色気を醸し出していた。
(なんか………… 声を掛けるタイミングを失っちゃったな…………)
そう思いながら僕は薄目のまま、息を殺してその様子を黙ってうかがった。
腰を床につけ、鼻歌交じりにストッキングを脱ぐ秋子さん。
ブラウスのボタンをはずし、ブラを取っては大きく一息、
形の良い胸の膨らみが僕の目に映り込む。
本人はその大きさにやや不満を感じているようだが、
少なくともこの寮内で一番大きいのは誰の目から見ても明らかだ。
髪を掻き上げ大きく伸びをしたかと思うと、
お気に入りのシャツを身に纏いながら、ゆっくりと僕の側へと近寄る秋子さん。
「和也? おーい? もう寝ちゃったのか? おい? 何とか言えコイツめ!」
小声で呟きながら僕の鼻を突くその仕草が可愛すぎて何とも言えない。
普段はあんなに凜として、甘えるなんて言葉の意味など知らなそうな人なのに…………
そんな事を考えながら僕は、相変わらず眠ったふりを続けながら、
この至福の時間をもうしばらく堪能することにした。