二つの閃光-2
内心ほくそ笑む修一は、あっちからもこっからも、澪を除いた全てのクラスメートから注がれる色欲に濡れた眼差しを浴びて、何もせずとも淫汁を滴らせるほどの発情状態にさせながら取り敢えず席についた。
このクラスで修一の毒牙に掛かっていないのは澪のみ。
この場で、このクラスの一員に相応しく生まれ変わらせても何も問題はないだろう。
いざ、と腰を上げた修一だったが、澪が直ぐ傍まで迫っていたことに面食らい、慌てて表情を作った。
「これ、ありがと」
修一のどす黒い内心を知らない澪は唐突にそう言って、机に何かを置いた。
「は?」
澪に何か貸した覚えがない修一だったが、反射的に机の上へ視線を向けていた。
五円玉のような形のものに紐が通されている、一見アクセサリーの類いに見えなくはないもの。
それを見て、修一はますます不思議に思う。
しかし、それのことばかりに気を取られている余裕はなかった。
「気を付けて……」
と踵を返す澪を前に、修一は慌てて立ち上がる。
今は澪の勘違いに付き合っている場合ではないのだ。
「水前寺っ」
修一の呼び掛けに振り返る澪。
「何?」
──お前は俺の性奴隷だ。
修一はただひたすら念じた。
──お前は俺の性奴隷だ。
澪が堕ちれば、このクラスは修一のハーレムと化すのだ。
「…………」
澪は表情を大きくは変えず、修一の目ばかり見つめている。
ただ、ほんの僅かに頬を赤くして……。
──お前は俺の性奴隷だ!
澪の微かな変化に気付くことなく、修一は何度も心で念じる。
実際は、時間にして五秒も掛かっていない。
そして、仄かな紅潮が消えた澪の口からついに声が漏れる。
「はい、ご主人様」
黒板の前には数学を担当している冴子が立っていた。
楕円レンズをシャープな赤フレームで彩ったメガネと、カチリとした黒いスーツがお決まりの冴子は、如何にもお堅いイメージを彷彿させる。
顔立ちが整っていること、数学を担当しているということも堅物イメージを助長している。
しかし今、そんなイメージを微塵も感じさせない表情で生徒の前に立っていた。
頬を上気させて、瞳もうるうると濡らし、口からは吐息が耐えない。
黒板の端に移って板書するときは、腰を艶かしくくねらせている様子を背後の生徒に見られているような状態だ。
しかし誰も不思議に思わない。
修一から性的快感を受けることはとっても幸せなことだと誰もが思っているこのクラスでは、冴子のタイトスカートの中にある玩具を修一が遠隔操作していることを知っているので、寧ろ冴子を羨ましく思っていた。
その羨望を込めて修一から“許された”自慰をしながら授業に取り組んでいる。
一限目の数学が始まると同時にショーツを脱ぐよう言われたクラスの女子達は、その命令には抗えなかった。
結果、クラスメート全員が同じ“心得”を持っていると知ることになったのである。
また、クラスメート全員の前で、修一の命令通りに冴子がスカートをずり上げたことにより、冴子も同じだと理解し、教師全員が同じ状態だという説明も受けたのだった。
「んああッ……くぅぅぅッ! ッ! ッ!」
ショーツのクロッチを不自然に突っ張らせている玩具の蠢きが激しくなった途端、黒板に押し付けたチョークがポキッと折れてしまうほど冴子は力のコントロールを失っていた。
絶頂がそうさせたのだ。
くねらせていた腰を弾ませてアクメダンスを披露した冴子は、板書途中にも拘わらず、黒板の右上に大きく書かれている「正」の字の四画目を書き足した。
「三十分で四回か……」
冴子を苛むバイブの強さを弱めた修一は、板書を再開した冴子から視線を外し、リモコンを机の上へ置いた。
黒板真正面の一番後ろの席に配置替えした修一からは、腰をもじもじさせる冴子の姿は勿論、水音を立てながら喘ぎを押し殺しているクラスメートの姿も見渡せる。
その数、二十七人。
一クラス三十人なので、唯一の男子の修一を足しても二人足りない。
何故なら、自慰をしているのが二十七人であって、残りの二人の女子生徒は修一の股座で身を寄せ合っているのだ。
唯一言いなり状態でしかないクラスメートで、一番始めに毒牙に掛けられた、北野友美。
欠席というかたちで修一を散々焦らした結果、クラスハーレム化記念奴隷になってしまった、水前寺澪。
この二人が、修一の隆々と聳える性欲を処理する役にあてがわれていた。
椅子に浅く掛けた修一の、だらしなく開かれた股の間で、先は鈴口から下は会陰まで小さな舌を大胆に這わせ、時折口内の粘液に包み込み、膨張する興奮を絶えない快感へ変えていく。
「くっ……澪っ……」
名前を呼ばれた澪はすっかり紅潮しきった顔で修一を見上げると、真っ直ぐに剛直を咥え込んでいく。
冷淡なイメージを彷彿させる、しかし女の子らしい美しさと血色とを持った薄い唇が自身の分身を潜らせていく様子は修一の興奮を煽り、首が動き出すと快感を伴わせる。
美麗な切れ長の目と柳眉に険しさを表しつつ、筋の通った鼻から抜く息にリズムをつけ、あの唇を往復させながら口内の唾液と舌とを絡め、扱く。
どこか大人びていながらも幼さもしっかり窺える澪の顔の一部分である口に逸物が出入りしている画はあまりにも刺激的だ。