みんな我慢が足りないんです!-6
「うわぁ〜 おいしそうっ! 流石風音だね! 今週はいいものが食べられそうだ!」
「なんだと女狐? それは先週までの私の食事に文句でもあると言うのか?」
「食事ぃ〜? あれはただ出来合いのお総菜を並べただけでしょ?」
「なっ………… お前こそ人のことは言えないではないかっ だいたい…………」
「はいはいっ 喧嘩してる子は追い出すよ?」
「くす…… さあ、冷めないうちにどうそ…………」
「「はぁ〜い、いただきまぁ〜す!」」
相変わらずの団欒模様。僕らに家族のような血のつながりは無いけれど、
喧嘩するほど仲がいい二人はときおりまるで姉妹のようにも見える。
風音はさしずめお母さん? すると僕は………… あれ?
「お父さんお醤油取ってぇ?」
「お、お父さん言うなっ! 雪菜さんと僕は二つしか変わらないでしょっ!」
「だってぇ〜 遠藤くんってなんだか歳の割にすごく落ち着いてるんだもん」
「そうですね、遠藤さんは………… うん、すごく大人に見えます」
「主様は生まれたときから主様です。大人でも子供でも無くて…………」
「はいはい、中二病乙!」
高校生の彼女達より年上とは言え、こう見えて僕はまだ十九歳。
わずか二つ三つの差でしかないのだ。
そんな思春期真っ盛りの男女が同じ屋根の下で共同生活してるなんて、
つくづくこの花咲女子寮は普通では無いんだなあと感じさせられる。
「そう言えば雨宮さん? あなた今日は補習だったと聞いたけど…………」
「はぅっ そ、それは…………」
「干渉するわけでは無いけど、解らない所があるのなら勉強見てあげましょうか?」
「ほ、本当ですか風音様っ!?」
「ちょっと………… 前から気になってたんだけどさぁ…………」
「なんだ女狐!? いま私は風音様とお話してる最中なのがわからないのか?」
「だ・か・らっ どうして風音には『様』美咲さんには『殿』を着けるのに…………
私は敬称が無いどころか『女狐』なわけ?」
「女狐は女狐だろっ 下等生物に敬称をつけるのは物好きな動物愛好家くらいだ!」
「だ、誰が下等生物よっ! そりゃ風音ほどでは無いにせよ、
こう見えても私だって勉強はトップクラスなんだからね?」
「ふんっ 深窓の美少女だなんだと外面だけはいいように取り繕いおって…………
だからお前は女狐だと言うのだ!
そうやって人様を化かしてばかりいると………… い、痛ててっ……」
「あんたねぇ………… いくらなんでも年上のお姉様に向かって言いすぎじゃない?」
「つ、積木さんっ ぼ、暴力はっ…………」
こうしていつもの穏やか?な時間を過ごしながら、そつなく食事を終えると、
僕はひとり料理をお盆に乗せては、花咲女子寮きっての問題児
───陽向美咲のもとへと足を向けた。