みんな我慢が足りないんです!-5
(誤解ってなんの事だろう? 僕はまた間違えた事を言ったのだろうか?)
僕はしばらく風音の後ろ姿を眺めながらそんな事を考えていたのだが、
ともあれ、風音がカウンセリングを申し出てくれたのは喜ばしい事だ。
詳しくは聞かされていないが、確か秋子さんが言うには、
読書好き勉強好きが災いして活字中毒からの妄想および言語の過敏症、
そして堅実な性格から極度の潔癖症も合併してるとかなんとか…………
「遠藤さん? そろそろ出来上がりますから皆さんを呼んで来てもらえますか?」
「あ、うん! わかった…………」
僕はぼんやりと今後の風音対策を考えながら皆を呼びに廊下に出ると、
そこにはすでに匂いにつられた様子の雪菜と雫が、
仲良くお腹を抑えて座り込んでいた。
「わっ!? な、何してるのさ二人してこんな所で…………」
「やっ、良い匂いがするなとここまで来たのはいいんだけどさ…………
なんか遠藤くんの大きな声が聞こえてきちゃって…………
その、取り込み中みたいだったからさ…………」
「ど、どうかなさったのですか主様? 何か雫に出来る事はありますか?」
僕はなんだかバツが悪そうに頭を掻きながらも、
敢えて気を利かしてくれた二人の行為に甘え、
とりあえずその場は笑って誤魔化した。
「あっ、そういえば美咲さんは?」
「さぁ? いつものようにまた部屋に籠もってるんじゃないかしら?」
「美咲殿ならいちおう私めがお声をかけましたが………… その…………」
「また今日も部屋まで持って来い………… って?」
「は、はい」
「まったく、しょうがないなぁあの人は…………」
僕はそう言って大きな溜息をつくと、
振り返り二人の背を押しながら食堂へと戻っていった。