みんな我慢が足りないんです!-4
「…………ご、ごめんなさい」
膝の上で硬く手を握り、擦れた声で風音が呟く。
「ごめんなさい………… あの子たちを悪く言うつもりはなかったんです…………
ましてや秋子さんの考えを否定するつもりも…………
そ、そうじゃなくて…… その…………
ここのところ遠藤さんがあまりにも疲れてるように思えたから…………」
そう言っては少し肩を震わす風音。
さっきまでの威勢はどこに、その姿を見て僕は情けなくも狼狽えてしまった。
「えっ も、もしかして………… 僕の体を気遣って…………?」
静かに黙って頷く風音。
下唇を噛みしめ、どこか涙を堪えているようにも見える。
「う、うそっ ごめん!? 僕、なんか勘違いしたみたいで…………
つい声を荒げちゃって………… ホントにその……」
「いいんですっ 私が誤解させるような言い方をしたんですから…………」
そう言っては小さく鼻をすすると、手で目元を擦っては立ち上がり、
まるで逃げるように料理の様子を見に行く風音。
僕もまた、それにつられるように立ち上がりはしたものの、
どうにも落ち着かないまま風音の後ろをうろうろと歩いていた。
「あ、あのさ風音ちゃん…………」
「ホント…… もういいんです………… すみません、気にしないでください……」
「そ、そういうわけには…………」
「くす………… もうっ そんなに狼狽えないでくださいよ…………
遠藤さんは何も間違って無いんですから、堂々としていればいいんです!」
そう言って風音はくすりと笑うと、
火を止め、大きく深呼吸をしては、振り返り僕の目をじっと見つめた。
「我慢が足りない───なんて言ったのは多分自分への苛立ちからだと思います。
この寮に来てから今まで、その…………
自分なりになんとかしようと色々と頑張ってはいたんですけど、
どうにも最近考えがうまく纏まらなくなってきちゃって…………」
「そんなっ それこそ僕に相談してよ? そりゃ頼りなく見えるかもしれないけど、
頼ってもらえなきゃいつまでも風音ちゃんの事がわからないままなんだから…………
さっきの話じゃないけどさ、風音ちゃんの性格からして…………
秋子さんの治療法が納得出来ないのはなんとなくわからなくもないんだけどっ
でもっ 秋子さんは秋子さんで考えあっての花咲女子寮なんだからさ…………
僕はもっと、その………… 風音ちゃんの事が知りたいんだよ…………」
僕は思わず風音の肩を握りながら力説していた。
そんな僕を見て、少し驚いた様子の風音だったが、
すぐさまその顔は笑顔にかわり、くすくすと笑いながらこう言ってくれた。
「もうっ………… そんな言い方されると誤解しちゃいますよ?」
「へっ? ご、誤解って…………?」
「くすくす………… 何でもありませんよ…………」
「と、とにかくさっ その、いつでもいいから一度くらい…………」
「わかりました。少し………… もう少しだけ時間をください。
近いうちに必ず、遠藤さんの所に相談に行きますから…………」
風音は少し頬を染めながらそう言うと、
すぐにまた僕に背を向け、何事も無かったかのように料理の準備を再開した。