クリスマスイブ-1
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四年前の春。
中学二年生になった銀杏は、とても暗く無口で、授業中にいつも本を読んでいるような少女だった。
そのため、毎日同学年の生徒たちにいじめられていた。
最初は無視だったものが次第にエスカレートし、物を隠され、本を破られ、給食をわざと落とされ、椅子に画鋲を仕掛けられ、そして当時から発育していた胸を触られたりしていた。
ある日クラスメートの男の子に男子トイレへ連れ込まれ、私はされるがままに胸を触らせている時だった。
「だっせ」
私たちが入ってる個室に突然入ってきた彼は、それだけ言って私の手を引っ張り、救いだしてくれた。
どうして学年の違う彼が二年生のトイレにいたのかは謎だけど、彼はそれからも何度か私のことを助けてくれた。
杏仁に色々手伝ってもらって彼の家がすぐ近く――というか同じマンションの同じ階だと知ったり、好みを訊いてきてもらったりした。
でもどうしてか、進級すると彼は私のことを助けてくれなくなった。私の前に姿すら見せなくなった。杏仁もいたおかげでいじめはなくなったけど、どうして彼は姿を見せなくなったのか今でもわからない。
そして高校生になった私は、自分を変えるために生徒会役員に立候補した。
まさか次の年に彼が同じ高校にくるなんて思ってなくて、さらにその翌年、つまり今年彼も役員になるだなんて信じられなかった。
私がオタクだって知られたときは恥ずかしかったけど、そのおかげで彼も私のことが好きだということを知ることができた。
運命は私に味方している。もうすぐ夏休みだし、きっといいことがあるよね。
とある日の銀河銀杏の日記より。
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十二月二十四日。
「よっ!久しぶり!」
クリスマスイブということもあり、一年ぶりに幼なじみたちと集まった。
一人は相馬 貴明(そうま・たかあき)と言って、俺と同い年だが高校には行かずにコンビニでバイトしているらしい。
もう一人は寿 総一(ことぶき・そういち)といい、俺よりひとつ上で実は同じYY高校の三年生だったりする。