温泉街 姫美のピンチ-3
「無理無理無理!」
姫美が珍しくエロいことに尻ごみしたのには理由がある。遼が手にした栄養ドリンクは、お徳用サイズの『デカデカビタミン』だったのだ。
「じゃあ、どうする?コンビニも薬局も国道沿いだし、今から買いに走ったらパーティに間に合わないかもしれないぞ。確か遅くなりすぎたら、途中参加はできないって、恵子ちゃんのお母さんが言ってたような…」
遼はニヤニヤしながらウソをついた。
「でも、無理よお」
「じゃあ諦めて帰るか」
「あああん、イジワル〜〜」
姫美は嘆きながらも、遼の手からデカデカビタミンを受け取った。そしてデカデカビタミンと自分の夫の股間を交互に見比べながら何かを握るように指で輪っかを作り、指が記憶している大きさで輪っかを微調整すると、その作った輪っかを軽く前後に揺らしだした。
「う〜ん、これくらいかしら?」
「何してるんだ?」
「エアーシコシコ」
真剣な表情で答えた姫美が、その慣れ親しんだ大きさの指の輪っかにデカデカビタミンを入れようとして、その大きさの違いに驚いた。
「ひ、ひえ〜〜〜、全然違う!」
姫美は気を取り直し、またもや夫の股間を睨みつけたまま、今度は口を「あ〜ん」と開くと、顔を前後に振りだした。
「今度ななんだ?」
「へあーへらひお(エアーフェラチオ)」
動きを止めた姫美は慣れ親しんだ口の大きさをそのままに、デカデカビタミンを口に入れようとした。
「あががががが、む、無理理無理無理無理〜〜〜、こんなの入んないよう」
顎が外れそうになった姫美は、結局涙目で嘆きだした。
「口を開けてまでオレのと比べるなよ…」
遼は自分の股間に目を落とし、しょんぼりつぶやいた。
「だって比べるのに一番わかりやすいんだもん」
悔し涙を溜めて訴える姫美を見た遼は、からかうのが可哀想になってきた。
「ごめん、ちょっとふざけただけだよ」
「でも、どっちにしても瓶が無いと…」
「オレが恵子ちゃんに頼んでやるから安心しろ。絶対に大丈夫」
姫美は遼のいつもと変わらない優しさに感動し、その優しさをそのまま受け入れようと思った。
「さあ、おいで」
しかし、いつもはこのまま感極まって夫に抱きつく筈の姫美が、しばらくしても瓶を握りしめたまま動くことは無かった。
「ん?姫ちゃん、どうした?」
両手を広げて待っていた遼は、中々抱きついてこない姫美を訝しんだ。
「あ、あたし…」
姫美は俯いたまま瓶を強く握り直した。
「ま、まさか…」