ネメシスの嘆き-5
――長い話は終わった。
招待ですのでと、バーテンダーは代金を断り、考古学者は椅子から立ち上がる。
店を出て振り返ると、予想通りさっきまであった扉は消えていた。
細い路地を抜けると、賑やかな都会の夜が広がる。
ネオンの輝く高いビルの群れ。行き交うたくさんの人々。殆どが人間だが、よくみればドワーフやエルフも混ざっている。
ビルの壁についた液晶画面では、新作化粧品のCMが流れ、美しいエルフのモデルが映し出されている。
役所の掲示板には、吸血鬼ウイルスの予防接種を呼びかけるポスターが貼られていた。
賑やかな夜の街を歩き、考古学者は帰路についた……。