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恋する気持ち
【学園物 官能小説】

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恋する気持ち-18

――ガラッ…

無許可のオイタで少々散らかしてしまった美術準備室をきれいに片付け、廊下に出る。
全身から流れ落ちていた汗はずいぶんひいたけど、未だ火照りが残る身体に吹き抜ける3月の風は心地よかった。
「ん〜っ!」
思わず、目一杯伸びをしてしまう。
まだ身長伸びるかな?

「ん〜っ!…じゃないっ!水沢っ、阿川っ!!」
「「あ゛っ!」」
素敵なタイミングで担任御登場…。
「お〜ま〜え〜らなぁ、卒業式だぞ今日はっ!どこ消えてやがった!?」
「ご、ごめん先生…」
そりゃ、怒るよな。
最後のホームルームサボった挙げ句に行方不明じゃ、二時間近くも探しに来なかったことが奇跡だ。
「まぁったく!校内放送で呼び出し掛けようとしたんだが…」
(…ですよね)
「君島が、あいつ半べそで俺を阻止して、お前らに頼んだ配布物も全部あいつが手伝ってくれたんだよ」
「泰臣が?」
「あぁ。なんか、七年前にお前ら二人に迷惑かけたから、その借りを返すとか何とか言ってたけど…あいつ、何やらかしたんだ?」
「―――――……」

ププーッ

吹き出した俺の隣で、燈子も笑いを堪えてる。
泰臣…、あいつもあいつなりにトイレ事件を引きずってたわけか。

「――で、お前らは後悔のない選択が出来たのか?」
「えっ」
「卒業式の後に男女が揃って行方不明になれば、何の話をしてるかくらいわかるさ。まぁ、『どの程度まで』話をしてたのかは聞かないが…水沢の、そのだらしない顔が全てを物語ってるよ」
「うぇっ、マジか!?」
…そんな事言ったって、こればっかりは不可抗力だ。
だって、嬉しい気持ちが止まらない。

「――阿川」
「は、はい!」
「人の気持ちを、少しずつでも理解出来そうか」
「先生…」
(人の気持ち?)
話が見えず、ポカンとしている俺。
やがて、空気を察した燈子と目があった。

「…直樹。私ね、心理学の勉強をしたくて、大学を変えたの」
「心理学?」
「うん。直樹のことを想う気持ちや、友達との関係…。自分には、どうやらまだまだ引き出しが少ないみたいだから、だから掘り下げて勉強をしたくなったの」

「そう…だったんだ」
「――でも、先生」
突然に、燈子が俺の手を握った。
「『恋する気持ち』は、さっき、直樹が教えてくれました」
(燈子…)

「…そうか。――水沢っ!」
「うわっ、は、はい!」
「お前ら、よくお似合いだよ。ただし!お前らにはまだまだ知らなきゃならないこと、学ばなきゃならないことがある。そして、可能性がある。…だから、無責任なことはするな。特にお前は男だから、阿川のことが大事ならしっかりしろよっ!」
(先生…)
「それと、さっきからお前ら二人のカバンを持って心配そうにそこから覗いてる奴も、いい友達なんだろうから大事にしてやれ」
(……へっ?)
「「――泰臣っ!?」」
振り返れば、廊下の角から見慣れた顔がこっちを向いている。


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