恋する気持ち-17
「ん?なに?」
「…直樹、自意識過剰。なんか、ちょっと悔しい」
「でも、当たりだろ」
「……うん」
一瞬の沈黙。
その後に吹き出したのは、二人同時だった。
「…燈子」
「…名前…」
「うん。ずっと、そう呼びたかった。『燈子女史』じゃなくてさ」
みんなと同じに阿川を慕い敬う呼び方じゃなくて、でも、ただの同級生でしかない名字呼びでもなくて。
いつか、お前と対等に向き合えたその時には、名前で呼ぼうって決めてたんだ。
「一緒にいよう。4月から住むところは離ればなれになるけど、きっと俺たちは大丈夫だから」
「直樹…」
「それにさ、11歳の時からずっとお前の顔見て過ごしてきたんだぜ。今さら、俺の人生に燈子がいないなんて考えられないし」
「…確かに。私も、直樹ともう会えない人生なんて想像もできないや。…何か、不思議。人って、こうやって出逢って触れあって、そして結ばれていくんだね」
「だな。俺なんて、お前が初恋なんだか…あれ?ちょっと待て。もしかして、俺の一生って燈子しか女と縁がないってことか」
「…不満なの?」
「いいえ…すみません」
いらないよ。
他の出逢いなんて。
望むのは、昔も今もこれからも、燈子一人だけだよ。
「――直樹」
「ん?」
「好き」
頬に、柔らかな唇が触れた。
腕の中で、いたずらっ子のように笑う愛しい人。
「――教室、戻るか」
「うん!」