自覚-7
「しかし……ゼインが魔物ねぇ……カリーが暗殺者なのは気づいたけどな」
「そうなのか?」
「あったり前。暗殺者独特の体捌きだったからな、カリーは」
姫様はこれでも国王の護衛を勤めていた……狙ってくるであろう暗殺者の事は一通り頭に入っている。
「で?」
「へ?」
全員が視線をケイに注ぎ、ケイは思わず姿勢を正した。
「ケイはどうなんだよ?」
「ど、どうって……何が?」
アースの問いかけにケイは少し動揺して答える。
「何がってポロ……好きなんだろ?」
ケイはぐっと詰まって返答に困った。
「好き……かもしれないけど……良く分かんねえ……同情じゃないかとも思うんだよな」
ケイはポロの思考を読んで彼女の人生を体験した。
世の中の暗い世界で生きてきた彼女に、自分の知ってる明るい世界を見せてやりたいと思う。
しかし、それは押し付けがましいのではないか?偽善者すぎやしないだろうか?とも、思うのだ。
「それって同情じゃないんじゃな〜い?」
話を聞いていたエンが、お茶をズズッと啜って言う。
「同情ってよりも……同調?」
「同…調?」
「ポロちゃんの思考を読んだ事で、彼女の望みもケイには分るんじゃな〜い?」
と言うエンにケイはハッとする。
「ポロの望みは……生きる事……自分のままで……誰の代わりでもなく、自分自身で」
『ゼロ』の代わりじゃなく『カリー』の代わりでもない……ポロ自身。
「ほらねぇ?」
「それに気づいてどう思う?」
アースは細長く焼いた焼き菓子を口にくわえて、ポリポリ音をたてながらニヤニヤする。
「……彼女の望みを理解して叶えてやれるなら……俺、何だってする」
それはつまり、好きだって事……ケイは顔を赤くして片手で口を覆った。
「自覚遅ぇよ……っつうかケイはロリコンだったか」
「あれでもポロは18歳だよ」
「お前、27だろ?充分ロリだっつうの」
どうでも良い言い合いを始めたケイとアースを無視した姫様は、カチャンと音をたてて空のカップを置いた。
「さて……じゃあ、かつての戦友に会いに行くか」
姫様はスクッと立ち上がってグルグル腕を回す。