自覚-2
「今回の事はマジで感謝してんだ」
海を最速で渡る事が出来たのも、ポロが危険な目に合わなくて済んだのも、こうやって快適な小屋を使えるのも、カリーを助ける事が出来たのも全部ケイのお陰。
「だからさ……もうひとつお願いがある。我が儘だけど、帰る場所が欲しい」
「帰る場所?」
「俺らには帰る家が無いから」
ゼインとポロは勿論、カリーとスランも今や死んだ事になってる人間だ。
「待っててくれよ。ファンの……あの魚屋でさ。必ず帰るから」
ニカッと笑ったゼインに、ケイはぐぐっと唸りきってバッと顔を上げる。
「分かった!絶対帰って来いよ!!ずっとずうっと、しつこく待ってんかんな!」
「おう」
ゼインとケイは拳を突き合わせると、ガシッと腕を組んだのだった。
昼過ぎに、ケイはカイザスに借りた馬を2頭引き連れて帰路に立つ。
「ケ〜イ」
「ケイさん」
馬に乗ったケイにカリーとポロが声をかけ、まだ馬を乗りこなせてないケイは慌ててしまい、つられた馬がたたらを踏んだ。
「わったたた」
「きゃっ」
ポロは慌てて手綱を引いて馬を宥める。
2人で移動している時もそうだったが、この馬達はポロの事が好きなようで彼女の言う事は素直に聞く。
「ととと……ありがとう」
「いえ」
ブルルッと鼻を鳴らした馬は、ポロに顔を寄せて擦りついた。
それを見ていたカリーは、両手を後ろに組んでケイを見上げた。
「あのさ、ありがとね?」
カリーは照れくさそうにケイにお礼を言う。
「乗りかかった船には飛び乗る主義なんだ」
お礼なんか要らない、と言いかけたケイはニヤリと笑った。
「そうだな……お礼はほっぺにチューでいいよ?」
ケイが頬を差し出すと、カリーはクスクス笑ってぴょんっと飛んでケイの首にしがみついてチュッと音をたててキスをする。
「へへ、ラッキー♪」
厚く柔らかいカリーの唇は何よりのご褒美だ。
「んふ♪」
ニヤニヤするケイだったが、遥か向こうに居るゼインが鋭い目で睨んでいるのに気づいてブルッと震えた。