秘密と偽物-4
「見ないよ。日記はプライベートなものだろ?」
「そうですね。でも今年の四月十四日の部分だけ読んでくれますか?」
四月十四日って、俺の誕生日?興味はあるけど、やっぱ気が引ける。
「嫌なら私が読みます」
杏ちゃんに日記帳を奪われてしまった。
「四月十四日、晴れ。今日は大好きな翔太くんの十七歳の誕生日。何をあげたら喜ぶかな〜と半年前から考えてみた結果、缶コーヒーを買ってあげた。ってなんで!?」
「たしかに缶コーヒーもらったかもしれないけど、あれ誕生日プレゼントだったのか……」
それ以前に先輩、俺の誕生日知ってたんだ。
「結局買ったプレゼントあげてなかったの!?お姉ちゃんバカすぎます……」
買ったプレゼント?缶コーヒー以外にも、何か用意されてたってことだったり?
「俺たち、両想いだったのか……?」
「だからさっきからそう言ってるんです!なのでお兄ちゃん。どうか先輩と本当の恋人になってあげてください!」
杏ちゃんは深々と頭を下げ、そんなことをお願いしてきた。
「……条件がある」
「条件、ですか?」
「先輩の口から俺のことが好きって聞きたい。そうしたら、本当の恋人になるよ」
素直じゃない先輩に『好き』って言わせるのは難しいだろうけど。
「杏ちゃんに協力してほしい。偽物の恋人に『好き』って言わせたい」
「そういうことなら、いい場所を知っています。明日の朝、家に来てください」
***
翌日は学校が休みだったので、杏ちゃんに言われたとおりに家へ訪れた。
「おはようございます、先輩。こっちです」
案内されたのは漫画本やゲーム機がたくさん置かれている部屋だった。そこに銀河先輩がスヤスヤとソファの上で寝息をたてている。
「寝てるみたいだけど」
「では、私は部活があるのでこれで。ちなみに、家族は全員出掛けてますからね」
「え?」
杏ちゃんはソファの上で眠っている先輩と、それを目前にどうすればいいのかわからない俺を置いて、さっさと家を出ていってしまった。
「ふたり、きり……」
ソファに近付き、可愛らしい寝顔を眺める。
先輩も俺のことが好きなら、相思相愛ハッピーエンドじゃないか。
「先輩……」
ドクンドクン
俺は眠っている先輩の胸を、布越しに揉んでしまっていた。
やばいやばいやばい何してるやめろ引き返せないぞ。