豊島造兵-1
私は豊島造兵だ。豊島産業KKの会長だ。
娘の良子は金田財閥の御曹司に嫁がせようと思っていた。
だから向こうの金田さんとも相談して、DVDの特別登録をしたんだ。
お互いに会った瞬間ビビビッと来るようにね。
だが、よほどあの2人はうまが合わないらしい。
顔を合わせても一向に相手に興味を示さない。
そのために何度必要もないパーティを開いたことか……。
そしてとうとうみすぼらしい男をわしに紹介した。
鈴木正という、どこの馬の骨とも分からない若者だ。
だが、どういう訳か、わしはこの青年と前に会ったような気がするんだ。
調べたところわしの系列会社の社員みたいだが、そんな平社員とわしとの間に接点がある訳がない。
なにか分からないが運命的な縁を感じるので、わしは頭から反対しなかった。
それに娘には気に入った相手と結婚すれば良いと言った手前もある。
予定では金田満とくっつく筈だったが、所詮機械の小細工で男女が結びつく筈もない。
機械の力よりも運命の力の方が数十倍も大きいに違いない。
きっと2人は出会うべくして出会ったんだろう。
金田の会長にもこのことは言っておこう。