竹中君とのデートA-6
「肩をテコにすれば、いとも簡単に骨折するぜ!」
「待ってくれ。言うことを聞くから。頼む」
「クソガキなんぞ許してやれ!」
「わかった。許す。許す」
腕折り寸前から解放された養父は、ふうっーと深呼吸しながら、左腕をさすった。
「関谷さん、あんた凄い腕だな。まあひとつ、仲良くしましょうや」
「誰と?」
「儂と」
「ことわる。ヤクザとつるむ刑事にロクな奴はいない。俺は、値打ちを下げたくない男なんだ」
「値打ち言われたら、身も蓋もないですよ」
養父は苦笑を浮かべながら、竹中を訝しげに見た。
「竹中君」
「はい」
「はっきり言っておく。あんたは、うちの娘、美和と交際しとった。そうだな?」
「え、…… それはその……」
顔面蒼白になった。
(竹中君が美和さんと…)
「美和の処女膜を破っておきながら、振ったことは許そう。だけんど、儂が可愛いがっとる養女の紗綾には手を出すな。わかったか」
「はい、わかりました。すいません……」
竹中が新田美和とエッチしていたなんて―。衝撃がからだに突き刺さり、亀裂ができて、愛が零れ落ちてゆく。
「さーちゃん、帰るぞ」
「はい…」
養父・勝雅は、ベンチの上に置いてあったスクールバッグを手に取って、歩きだす。
「おーい、大事なモンを忘れるな」
関谷は、歩きかけた紗綾に懐中電灯を渡してきた。
「ありがとう」
「そいつでアソコを照らしてもらえ」
「えっ?」
「いや、なんでもない」
照れたような顔になった。
紗綾は、下を向いてうなだれている竹中に鋭い視線を浴びせた。そして、養父に向かって歩を詰めていった。
(さようなら、竹中君)
紗綾は歩きながら、頬にそっと触れた。竹中の唾液の残滓がまだ残っていた。