竹中君とのデートA-5
養父・新田勝雅の声だ。懐中電灯の明かりがこちらを照らした。養父がなぜここに?
背筋にまた寒気が走った。
「さーちゃん、帰りが遅いから心配してたんだ。デートだったのか」
「いえ…少し話があって…」
竹中は顔をひきつらせていた。
不機嫌でないときも不機嫌そうに見える養父の骨張った顔。今は、このうえなく不機嫌であることを露わにしている。胸の中、冷たい風が舞った。
「おい、あんたは誰だ」
関谷に投げかけた。
「俺もお嬢さんとデートしていた。3Pだな」
「貴様!」
「貴様と呼ぶなよ。新田さん」
「あっ……あんたは…鳴海署の…」
「気づくのが遅いな。こんなカッコいい男を忘れているとは、ヤキがまわったか」
「関谷刑事…」
「久しぶりだな。訂正しておくが3Pはジョークだ。真に受けるな」
「わかっている」
「焼き肉屋で一杯やって、ほろ酔い気分。鼻歌を歌いにここに来たら、お二人と出会った。品のいいお嬢さんじゃないか。見惚れた…」
「なにを……見惚れてもらっても困るが……。関谷さん、儂はそこにいる高校生に話がある」
「どうぞ、ご自由に」
「君は、竹中君だね」
「はい」
顔をひきつらせて、狼狽していた。なぜ、養父は竹中を知っているのか。
「うちの大事な養女と何をやっていた?」
語気に不愉快さが滲んでいる。
「いえ……何もしてません。その……世間話を少し……」
「世間話だと…たわごとを言うな!」
養父は懐中電灯を投げ捨て、竹中に挑みかかった。瞬く間に、学生服の首を掴み、締め上げていく。
「お父さん、やめて!」
関谷が動いた。身のこなしが柔らかく素早い。養父の腕を学生服から引き剥がし、そして、腕を掴みながら背と背を密着させた。肩越しに養父の腕を担ぐ格好だ。