告白2-9
「だって、お前に好きだって言うときはこの作戦でいくって決めてたもん」
彼はそう言って、子供をあやすようにグリグリと少し乱暴に私の頭を撫でた。
涙でぼやけて見える土橋くんの顔は、いつもの意地悪そうな笑顔で私を見下ろしていて。
こんな時でもからかうような彼の表情に、私は少し不安を覚えた。
私をからかう時に、決まって見せる彼のその顔が一番好きだったけど、今だけはその表情は見たくなかった。
せっかく彼が言ってくれた言葉が、冗談で片付けられてしまうような気がして怖かった。
「……もしかして、またからかってる?」
私がおそるおそる言うと、彼は不満そうな顔になって、これ以上ないってくらいに思いっきりため息をついた。
「なんでそんなこと言うんだよ」
「だ、だって、またあのいつものからかう時の顔してるし……」
私の言葉に、彼はすっかり呆れた顔をして、私のおでこに軽くデコピンをした。
軽い痛みが頭の中に響いて、思わずしかめっ面になる。
そんな私のことを見た彼はフウ、とまた小さく息をついてから、
「……あのなあ、俺だっていつもふざけてるわけじゃねえんだよ。いちいち人の顔にケチつけんじゃねえ」
と、私の前髪を軽くかきあげてきた。
そして、急に真面目になった顔を私に向け、
「……からかってなんかいねえからな」
とだけ言うと、ゆっくり顔を近づけてきた。
“三度目の正直”と言うわけじゃないけど、スローモーションのように近づく彼の顔に、私はやっと心の準備ができたかのように自然と目を閉じ、唇が触れるのを待つことができた。