告白2-8
私の突然の爆笑に、土橋くんは唖然とした顔で固まっていた。
「土橋くん、以前私が理想の告白のシチュエーション話をしたの覚えてる? 抱き締められながら“好きだ”って言われたいってヤツ」
笑いすぎて涙が滲んできて、人差し指でそれを拭いながら彼の顔を見た。
「まあ……一応は……」
歯切れが悪い答えをそのままに、私はさらに話を続けた。
「あんなの土橋くんにからかわれて言った出任せだったのね。土橋くんだってさんざん私のことバカにして笑ってたじゃない?」
土橋くんは私に笑われたのが悔しかったのか、顔を赤らめて口をギュッと結んでいる。
「あんなに私のことバカにしてたくせに、たった今自分がそんなクサい告白しちゃってるから、もうおかしくて!」
今まで散々からかわれてきた仕返しができた私は、鬼の首を取ったように笑い続けた。
しつこく笑い続ける私に、土橋くんは小さく舌打ちすると、
「ったく、こんなときに馬鹿笑いしてんじゃねえよ。色気のない奴だな」
とむくれて見せた。
「だって……」
悔しそうな顔をしている彼に、なんとなく優越感を感じる。
初めて主導権を握れたんだから、もっと悔しい顔をさせてやりたい。
「だって、あんな私でも忘れてたようなこと……覚えてて……」
息切れしながらも、なんとかからかってやりたくて、一生懸命言葉を考える。
「もしかして、私のためにそんなガラにもない告白しちゃったのかなって思うと……あんたも意外と可愛いとこがあるんだなって思って……」
やっと私が彼をバカにしてやるチャンスを得られたのに、なぜか声が震えて鼻の奥がツーンと痛くなってうまく喋れない。
「……それが、……すっごく嬉しくて……」
もうこれ以上は言葉が詰まって何も言えなかった。
結局、私は逆転のチャンスを活かすことができなかった。
そんな私の様子を見ていた土橋くんは、私の頭の上に手のひらをポン、と優しく置いた。
まるでそれが何かのスイッチだったかのように、手のひらが置かれた瞬間にポロポロ涙がこぼれ落ち始めた。