告白2-7
―――このまま前みたいに戻れたら。
私がずっと抱いていた気持ちを彼も抱いてくれていた、それだけで充分過ぎるほど幸せだった。
こみ上げてくる涙を必死に抑え込むように、鼻を何度もすすり上げながら、黙って彼の次の言葉を待つ。
「そしたらお前、急に泣き出して教室出て行ったろ? 人の気持ちも知らないで、なんて言うし」
「…………」
「お前が泣きながら言った言葉の意味、ずっと考えてた。自惚れちゃいけないんだろうが、俺には応援されたくないってことは、もしかしたら石澤の好きな奴って俺だったのかなってふと思った。
でも一旦そう思っちまうと、お前のことばかり考えてしまって、もう自分の気持ちに歯止めがきかなくなった。きっと心のどこかにずっと押し隠してた気持ちが一気に溢れてきたんだろうな」
次第にまた鼓動が速くなっていく。
冗談を言っているんじゃないかと、そっと彼の顔を覗き見ても、あの意地悪そうに笑う顔はどこにもなかった。
「俺は本当は自分が誰を好きだったのか、やっと気付いた。……郁美は多分そんな俺の気持ちを全部見透かしてたんだろうな。それで、ついこないだ別れようって言われたんだ。
郁美と別れたばっかりで、こんなこと言うのは節操ないし、お前の気持ちに対する答えを出さないまま先に手を出しちまって、マジで自分が最低男だなって自覚してるんだけど……」
土橋くんはそう言うと、私の目の前に一歩踏み出し、フワリと抱き締めてきた。
彼の優しい香りが再び私の鼻をくすぐった。
「俺もずっとお前が好きだった」
小さな声だったけど、最低男の口から出た答えは、確かに私の耳元で優しく囁かれた。
でも、土橋くんの腕の中で聞いた言葉は、にわかには信じられなかった。
今まで恋愛というものは私には縁のないもので、こんなマンガみたいな展開が自分の元へ訪れるとは夢にも思わなかったからだ。
こんなマンガみたいな……。
とある出来事を思い出した私は、さっきまでの甘い空間から一気に現実に戻され、次第に肩を震わせ始めた。
「……おい?」
肩を小刻みに震わせている私を不審に思った彼は、抱き締めていた私の身体をそっと離して、顔を覗き込んできた。
小刻みに震えていた私はとうとう耐えきれずに、盛大に噴き出した。