告白2-5
少しむくれたように俯く土橋くんに、なんと声をかけたらいいのかわからなかった。
「あの……ごめんね、キツく言い過ぎた……」
おずおずと言い出すと、彼は無理に笑顔を作り、
「いや、俺が調子に乗ったからだよな。ホント悪かった」
と、小さく頭を下げてぷいっと背中を向けた。
「……いいよ、もう」
未だに心臓がバクバク鳴っているのをなんとか宥めながら、素っ気なく言った。
なんで、私が悪者みたくなってんのよ。
私は口を尖らせつつ、彼の黒いスニーカーに目を落とした。
すると突然彼のスニーカーがクルリとこちらに向く。
ん?
何の気なしに再び顔を上げると、彼はあの意地悪な笑みをこちらに向けていて、
「今度はちゃんと真面目にやるからさ」
とだけ言うと、私の左手をグッと握りしめて体を引き寄せてきた。
「は!?」
私が何か言うより早く、唇に再び甘く痺れるような感覚が襲ってくる。
二回目のキスも触れるだけの一瞬の出来事だったけど、私の心を乱すには充分過ぎるほどの威力があった。
骨抜きにされるとはこういうことを言うのだろうか、私はヘナヘナと足元から力が抜けていき、そのまま地面へと崩れ落ちかけた。
でも彼は素早く私の身体を支えて立ち上がらせ、そのまま抱き締めてきた。
「ちょっと……!」
彼の腕の中でもがくように身体を捻ろうとしても、それすらさせてくれないほど、彼はキツく私を抱き締めていた。
こうやって抱き締められて、嬉しい気持ちはもちろんあるけど、このまま流されてうやむやにされる不安の方が今は勝っている。
答えを言わないまま、どさくさに紛れて二回もキスをしてきた彼に、今度こそ怒るつもりで声を震わせながら、
「……な、何も言わないでこんなことするなんてズルいよ……」
と、言った。
私の言葉に彼は身体をピクッと震わせ、抱き締めていた腕をほんの少し緩めた。
私は睨みつけるつもりで彼の顔を見上げた。
そこには初めて見る真面目な顔がこちらを見つめており、その表情にドクンと心臓がまた跳ねた。
彼の真剣で真っ直ぐな眼差しに、再び身体が強張って身動きがとれなくなる。
もはや私は睨みつけるのも忘れて、彼の眼差しから逃げるように視線を逸らした。