はじめての、えっち。-1
「で? そのまま帰ってきちゃったの?」
「うん……」
「うわー、そりゃ浩紀くんも困っちゃうよ。電話かメールでも、フォローしておいたほうがいいんじゃない?」
「わかってる! でも……恥ずかしいんだもん!」
「あはは、聞いてるこっちのほうが恥ずかしいって! ほらほら、さっさと電話しなさいよ」
大学の友人である秋絵の部屋で、千春はテーブルの上に突っ伏していた。
つるつるしたガラス面には、情けない顔の自分が映っている。
薬指に光るおもちゃの指輪も、涙でぼんやり滲んでしまう。
せっかく、せっかく良い雰囲気だったのに。
浩紀だって、すごく頑張ってくれたのに。
けらけらと笑いながら、携帯電話をぐいぐい押し付けてくる秋絵。
その隣で、千春は数時間前の自分の態度を、心の底から後悔していた。