はじめての、えっち。-7
手を繋いで、暗い夜道を歩く。
握られた手が温かくて、また、泣きそうになってしまう。
さっきから浩紀は、無言のまま。
きっと、怒ってる……。
当たり前だよね……。
「なあ、チイ」
「えっ……?」
次の角を曲がれば千春の家に着く、というところで、浩紀が急に口を開いた。
チラチラと瞬く街灯の下。
足を止め、少し体を屈めて千春と目線を合わせてくる。
「夕方は、ごめんな。びっくりしたんだろ? いきなり、キスとか言われても、そりゃ困るよな」
照れ笑いをしながら頭を掻く、いつものしぐさ。
大きな黒目には、千春の戸惑った表情が映っていた。
「ううん……そんな」
「俺、女の子と、そういう……キスとか、したことなくてさ。チイのこと、すげえ好きだって思って、もうすぐ離れなくちゃいけないから、その、焦ってたっていうか」
「浩紀……」
「いや、でもさ、チイが嫌なこと、俺もしたくないし。なんか、悪いことしたなあって、それだけちゃんと謝りたかったんだ」
「わ、わたし、嫌なんかじゃないよ!」
力が入ってしまったせいで、妙に大きな声が出てしまった。
でも、ちゃんと伝えなくちゃ。
だって、浩紀のことが好きだから。
「チイ……」
「そりゃ、びっくりしたし、恥ずかしかったけど……ひ、浩紀となら、キスもエッチも、全然嫌じゃないんだから!」
言っちゃった。
顔から火が出そう。
浩紀の腕が、ふわりと千春を包み込んだ。
「あの、さ……」
「なに?」
「だめだったら、それでいいんだけど」
「だから、なに?」
「このまま、帰したくないって、言ったら、どうする?」
心臓の激しい鼓動が、千春にも感じられた。
……わたしだって。
ぎゅっ、と浩紀に抱きついて囁く。
「わたしも、帰りたくない」