はじめての、えっち。-4
髪を撫でていた手が、頬に触れる。
ああ、くすぐったい。
浩紀の顔は、もう笑ってはいなかった。
「あのさ、キス……しても、いい?」
「えっ」
心臓が、とくん、と小さく鳴る。
ゆっくりと顔が近付く。
大好きな相手だから、嫌だなんて少しも思わない。
それに、愛し合った大人の男女がどういうことをするのか、知らないほど子供でもない。
照れくさいのと恥ずかしいのと、いろんな気持ちがごちゃまぜになって。
やだ……嫌じゃないけど、こんなの。
どうしよう、どうしよう……!
気がつくと、千春は浩紀の胸を思い切り突き飛ばしていた。
「チ、チイ……?」
「あ、あの……」
もうだめ。
目も合わせられない。
「ご、ごめん……えっと、その……もう、今日は帰るね!」
畳の上に尻もちをついた格好の浩紀を残し、千春は上着とバッグを引っ掴んで、本当に帰ってきてしまったのだ。
どうして、あんなことしちゃったんだろう……。
思い返すほどに、死にたいくらいの後悔に襲われる。
とてもじっとしていられなくて、親友の秋絵の部屋を訪れたのが、ついさっきのことだった。