はじめての、えっち。-3
目標は、2年。
そんなに長い間ではない。
頑張れば、週に一度くらいは会える。
でも。
幼いころから近くにいるのが当然だったことを考えると、その寂しい時間は永遠にも思えるほどだった。
「なーんか、心配だな。ひとりで放っておいたら、他の男に誘われてさ、ふらふらって行ったりしないかな」
千春の長い髪を優しく指で梳きながら、浩紀が笑う。
「そ、そんなわけないじゃない。浩紀のほうこそ、会社で可愛い女の子に言い寄られたら……」
もしもそんなことになってしまったら、勝てる自信が無い。
流行りのファッションに身を包んだ、スタイル抜群の美女が浩紀を誘惑しているところを想像するだけで、絶望的な気分になる。
意地悪そうな笑顔が、千春をからかうようにのぞきこんできた。
「なんか変なこと考えてるだろ。勝手に落ち込むなよ」
「だって……嫌だもん。わたし、美人じゃないし、浩紀のこと盗られちゃう……」
鼻の奥がツンと痛くなって、ポロッと涙がこぼれる。
「ああ、もう、ほんとにこの泣き虫は。大丈夫だ、俺はそんなにモテないから」
モテない、なんて、そんなのは嘘。
身長は、街を歩けばちょっと目立つくらいに高い。
顔も、千春のタヌキのような顔とは違い、すっきりと鼻筋が通って涼やかな印象だ。
性格だって、ほんとに優しい。
中学のときも、高校でも、後輩の女の子たちから何度も告白を受けていた。
そのたびに、「俺、恋愛になんて興味ないから」って突っぱねていたのも知っている。
だから、ほんとはずっと千春のことを想ってくれていたのだと知って、春先のいちごを口に含んだときのように、たまらなく甘酸っぱい気持ちになったのだ。