その時は私がいるではないか-8
「ふふ、まだわからないのか君は?」
「…………え?」
「どうして私がいかに恩師の息子と言えど、
この若さで見ず知らずの人間の後見人にまでなったと思うんだ?」
「…………え? …………ええっ!?」
秋子さんの言わんとする事の意味がよくわからない。
いや、わからないなんて嘘だ。
わかってしまったからこそ僕は声を上げ驚いてしまったのだ。
「いや、すまんすまん…… そんなに驚かせるつもりじゃないんだ」
「お、驚くなと言う方が無理あるんじゃ……」
「もちろん両親を亡くした君に過去の自分を重ねたのは紛れもない事実だぞ?」
「それは…… もちろん疑う余地などないですけど……」
「けれど私だって聖人君子ではないさ。
それだけの理由で人ひとりの人生を受け持とうなんて身の程知らずではない。
むしろ生涯唯一とも言える愛した人がひとり途方に暮れていたから…………
そんな理由でなりふり構わず後見人に名乗りを上げたっていうほうが、
よっぽど人間らしいとは思わないかい?」
そう言って秋子さんは恥ずかしそうに僕の顔を覗き込むと、
わずかに瞳を潤ませながら、僕の体をきつく抱きしめてきた。
「そ、それって…… つまりその男の子っていうのは…………」
「なんだ? まだこれ以上の説明が必要か?」
「いえ、その…………」
「もう一度言おう…… 君は私にとって何よりもかけがえのない人なのだよ」
その言葉を最後に、僕たちは無言のまま肌を重ねあわせた。
はじめて手にする女性の体に興奮を隠せず、
ただがむしゃらにそれをむさぼるだけの僕。
そんな僕を終始愛おしそうな目で見守りながら、
最後まで優しくリードしてくれた秋子さん。
たがいに生涯はじめての秘め事だけに、途中いろいろあったりもしたけれど、
気がつけば僕は本能のままに腰を動かし、
溜まりかねたそのすべてを秋子さんの中へと吐き出していた。