その時は私がいるではないか-5
「あ、秋子さんっ……? えと………… うわっ……」
「和也? 君はこうして女性のここに触れた経験はあるのか?」
「な、無いですよ!? その…… は、初めてです…………」
「そうか…… 知ってるとは思うが普段からこんなに濡れてるわけじゃないんだぞ?」
その言葉通り初めて触れた女性の、いや秋子さんのそこは、
今考えても尋常じゃないくらい、
まるでお風呂上がりのようにグッショリと濡れそぼっていた。
「ぶっきらぼうで飾り気もなく、暇さえあれば本ばかり読んでいた私だが、
これでも一応あれだ…… 成人したひとりの女なのだ…………
性欲もあれば当然我慢出来ずに、自らの手でその処理に励む夜もあるのだ……」
「あ、秋子さん? いったい何の話を…………」
その突飛な行動もさながら、僕は秋子さんの言葉に何度も耳を疑った。
そりゃ女性とて性欲があり、自慰行為でそれを抑制するのは至極自然な事だ。
けれど知識ばかりが先行した童貞の僕に、
淡々とながらもその恥部を明け透けに晒すなんて行為、
興奮するなと言うほうが無理な話ではないだろうか。
「つまりだ………… その、つまり何が言いたいのかと言うとだな…………
こんなにも分泌液が大量に発生するなどという事態…………
私も初めての事で…… これでも困惑しているのだよ……」
そう言い終えるや、みるみる顔を赤らめてしまう秋子さん。
僕はと言えばこの異常な状況さながら、
突然のカミングアウトの応酬に、すっかり頭が混乱して言葉を失っていた。
「だ、だいたい君がいけないのだぞ? 魅力的だとか……
かけがえのないない女性だなんて心にもない言葉を言うから…………」
「こ、心にもないだなんて…… それは、いくらなんでもそれは心外です!」
確かに歯の浮きそうなセリフではあったが、そこにはしっかりと心を込めていた。
母としてではなく、ひとりの女性として、
この頃だけでなく今もなお、僕は秋子さんをかけがえのない存在だと信じて疑わない。
「す、すまない…… どうにも君相手だとその…………
いつもの冷静な私ではいられないみたいで…… その…………」
「もうっ………… だからって謝らないでくださいよ…………」
そう言って僕は少し体を起き上がらせると、
恐る恐る割れ物を扱うような手で、細い秋子さんの体を両手で抱きしめていった。