その時は私がいるではないか-12
「ありがとう和也! やはりお前は私の見込んだ男だけの事はあるな!」
「く、苦しいっ…… わかった、わかりましたからっ!
秋子さんの力になれるなら、クランケの性欲処理でもなんでもやりますからっ」
「うむっ! た、ただしっ! クランケとは絶対に性交渉をしてはならんぞ?
これだけは何があっても絶対に守ってもらうからな?」
「え? せ、性交渉は禁止………… ですか?」
またしても話がややこしくなった気がする。
カウンセリングでは解決しない、重度の患者だけを招き入れる病理棟───花咲女子寮。
そこの管理人をするかたわら彼女達の望むカウンセリング、
つまり性欲処理を僕に補助してあげて欲しいというのはなんとなくわかった。
いや、性欲処理と言うとあまりに下世話な響きだが、
ようはクランケの精神ケアを引き受ける場所だと考えると理解出来なくも無い。
ただ、性欲処理を助けるも性交渉は禁止だと言われると、
なんだか少し僕の考えていた事と違うような……
「クランケが望むならキスしようとクンニしようと一向にかまわん。
よしんば君の体を欲するなら、オーラルセックスされる事もまたやぶさかではない。
けれど性交渉───厳密に言うと陰茎を膣内に挿入する行為だけは絶対に駄目だ!」
相変わらず恥ずかしい言葉を臆面無く語る秋子さん。
とにかくクランケとSEXだけはするなと言いたいらしい。
「わ、わかりました………… でもそこまで許しておいてどうして性交渉だけは?」
「そ、それはカウンセリングの範疇を逸脱する行為に他ならないからだっ」
「確かに、性交渉で解決するなら相応の場所に行ってもらうべきですね…………」
そもそも性欲処理とひとくちに言っても、
実際にどのような事をしてあげればいいのかなんて現段階ではわからない。
おそらくクランケに応じてその手段は異なるのだろう。
それによく考えてみれば医者が治療の際、患者に興奮して襲ったりしないように、
カウンセラーの僕がクランケに興奮して性交渉をするというのは確かに問題だ。
それこそ社会的問題となり、秋子さんはカウンセラーという立場どころか、
名高い権威さえもすべて剥奪されかねない。けれど…………
「でも…… でもそれって、僕にとってはかなり生殺しなんじゃないですか?」
僕がポツリとそう呟くと、秋子さんはわずかに訝しげな表情をしながら、
ふと視線を外してこう呟いた。
「そ、その時はっ…… その…… わ、私がいるではないか…………」
「…………え?」
「こ、この私の体に女の悦びを教えておいて……
今後は自慰行為で処理しろなんて言うのはあまりに後生ではないか?」
「それってつまり…………」
「つ、つまり君の性欲処理は私がしっかりサポートするからっ、
君は安心してクランケの性処理をサポートしてくれればいいという事だっ」