その時は私がいるではないか-11
「……ってあれ? さっきここに住まわす人は重度の性に悩む女性だって…………
そんな人達の要望って言ったらそれこそ………… その…………」
「うむ、まぁ十中八九が性欲処理の手助けになるだろうな」
「せ、性欲処理の手助け!?」
その言葉に僕は思わず大きな声をあげながら秋子さんの顔を覗きこんだ。
今しがた童貞をすてたばかりのこの僕にそんな大役…………
いや、そんな事より秋子さんは僕に想いを馳せていたのではないのか?
その僕に見ず知らずの女性の性欲処理を任せるなんて、
いったいどういうつもりなんだろうか…………
「いいんですか? その、僕が他の女の人とそういうことしても……」
僕は恐る恐る秋子さんにそう問いかけた。
いや、だってどう解釈してもおかしいだろう?
いかにクランケとは言え女性である事に変わりは無いのだ。
悩みを解消してあげたいという思想は立派だけれど、
他ならぬ僕にそれを手伝わせるのはどうにも納得がいかない。
「私は別に形などいらぬ、嫉妬なんて面倒な感情も持ち合わせていない。
私は君の母であり姉でありながら────唯一無二の女であればそれでいいのだ!
そもそもカウンセラーとクランケには絶対的信用が不可欠。
その大切な私のクランケを預けるのだぞ?
私が最も信頼おける男でなければどうして任せられようぞ?」
秋子さんは右手をギュッと握りしめながらそう力説すると、
いつもと変わらぬ自信に満ちあふれた顔で僕をじっと見つめた。
「はぁ…… つまり僕だからこそ任せられるわけで、
僕でなければこの寮に人を住まわせるつもりも無い………… と言う事ですか?」
「うむ、まさにその通りだ!」
僕が話を理解したと見えたのか、秋子さんの顔は一気にほころび笑顔へと変わった。
「やれやれ…… なんだかよくわからない理屈ですけど…………
少なくとも秋子さんの意志だけはしっかり伝わりました。
それが僕にしか出来ないのなら、僕だけが秋子さんの助けになれるのなら…………
わかりました、なんとか頑張ってみます…………」
その言葉を聞きいっそう顔の筋肉が緩む秋子さん。
すっかり感極まった様子で、両手を拡げたかと思うと、
たわわに揺れるその大きな胸元に僕の顔をギュッと埋もらせた。