吠える豚女-1
『あのぉ、お仕事中すみません。菊池紗耶香さんですよね?』
「はい?」
『私警察の者でして、ドロンボと言います』
「け、警察!?」
『ええ、あなたの友人の磯山貴男さんが昨夜自宅で亡くなってましてね。ちょっとお話を伺いたくて』
「殺されたんですか」
『おや?私は亡くなったと言っただけですが…何か彼が殺されるような心当たりでも?』
「まぁ、恨みを買うような方でしたから…」
『その辺り詳しく』
「役職も課長止まりで偉そうにしてるし、しょっちゅうセクハラしてるしね」
『ほうほう、なるほど。貴女もセクハラの被害者ですか?』
「え…ええまぁ」
『…本当に?』
「本当ですよ」
『デブなのに?』
「は?」
『随分デブですよね?』
「何それ!どういう意味!?」
『それで昨夜の9時頃は何をしてらっしゃいましたか?』
「くっ…別に!仕事してましたけど!?」
『豚舎で?』
「何でだよ!ここで!何!?豚って言いたいの!?」
『これは失礼ww』
「笑ってんじゃねぇよ!もう出てけ!」
『貴女は太っています』
「余計なお世話だよ!いちいち言うな!」
『ところでどんなセクハラをされたのですか?』
「あいつは…私を…私を飛べない豚って…ただの豚って!」
『上手いwww』
「お前ケンカ売ってんだろ!笑うな!」
『それがセクハラですか?』
「そうよ!体のこと言うなんてセクハラじゃない!」
『だってデブじゃん』
「違う!」
『マツコDXじゃん』
「いい加減にしなさいよアンタ!」
『似てるっwww』
「別にモノマネしてねぇよ!」
『素で似てるとでも?』
「そういう事言ってんじゃねぇよ!馬鹿にしてんの!?」
『彼は何でこんな豚に殺されなければならなかったのか』
「殺すつもりは無かったのよ!ただカッとなって灰皿でっ……あ」
『あ』
「…」
『話して…くれますね?』
「だって…だってあの人!私が太ってから他の女ばっかりちょっかい出して…私と結婚してくれるって約束だったのに!」
『痴情のもつれ…ですか』
「あの人はどうせ最初から遊びだったのよ!最初から私に愛をくれなかった!最近なんか誕生日プレゼントもクリスマスプレゼントもくれなかったわ!」
『正に"くれないの豚"』
「早く逮捕しろよ!もうお前と話したくねぇよ!」