27 断罪の要求-3
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この日。一番の災厄は、ジェラッド王都の人間たちだ。
結界を張り続けるユハの元へ、矢継ぎ早に報告が飛んでくる。
「ヨランめ!恥知らずな裏切り者!!」
「飛竜たちの塗料は落としましたが、まだ起き上がれません。さらにドラバーグ兄妹もなしでは……」
口々にうろたえる将軍たちに、、ユハの厳しい叱責が飛ぶ。
「甘えるな!!ここは飛竜公国に非ず、ジェラッド王国!竜騎士団なしでは勝てぬなど、泣き言は許さん!!」
マウリの魔法具によって、自国の惨劇が最大限利用されようとしているのに、ユハも気付いていた。
「あの男はジェラッド国を壊滅させ、功と力をストシェーダ民に見せつける事で、王位を手に入れようとしている」
「な……」
息を飲む将軍達の背骨へ、常の愛くるしい仮面をかなぐり捨てた厳しい王者は、鉄槌を叩き込む。
「裏切りも先手を取るのも、戦の常道だ!!敵を粉砕し民を守り抜く事だけに専念せよ!!」
それ以上、ユハが演説をする必要はなかった。
すっかり表情を引き締めた将軍達は、壮年の軍師に指示を出され、部下たちを率いて持ち場へ急ぐ。
「陛下……キーラさまの行方も捜しておりますが……」
側近の一人が、おずおずと話しかけた。
「……ああ。無事だといいが」
ユハの額に、また一筋汗が滴る。
結界張りの苦労とは違う汗だった。