竹中君とのデート@-2
緑地公園の中を少し歩いてから、桜の木の近くにあるベンチに並んで腰掛けた。
「紗綾さん」
「はい」
「紗綾さんは背が高いし、ほっそりしている。とても綺麗だ。近い将来、どんな仕事に就くのかな?」
「竹中君って口が上手いのね」
「そんなことはない。正直、見たとおり、表現しているんだ」
「仕事…。就きたい仕事はまだ考えてないの。好きなのはファッション関係」
「紗綾さんなら、キャビンアテンダントも似合うよ。航空機の中でモテモテになるだろうな」
「まあ…」
「紗綾…僕は…」
「はい?」
思い詰めたような竹中の声。
竹中は、セーラー服の右肩に手を伸ばしてきた。紗綾の肩を抱いてきたのだ。
「どうしたの?」
肩を引き寄せられた。二人のからだは密着する。
「竹中君…」
「大好きだ」
左手で、右の頬に触れてきた。
「ちょっとやめて」
竹中の唇が接近してきた。紗綾は顔を捻って逃げようとしたが、竹中はそれを許さなかった。白い頬に唇が這った。
奪われてしまう―。竹中に好意を持っているので中途半端にしか抵抗できない。唇と唇は重なった。紗綾はどよめいた。頭は霞が掛かったようにぼんやりとなってしまった。目を瞑る。
初めてのキス。ああ、これがキスの味なんだわ。どよめきの中に嬉しさがあった。
最初は唇を押しつけられていただけだったが、やがて唇を吸ってきた。肩を抱いている竹中の手に力が込められた。抵抗する気持ちが遠のいてゆく。ただじっと、竹中の唇の感触を味わっていた。
ひととき経って、唇を離した竹中は「嬉しいよ。ずっと、こうしたいと思っていた」と、囁いてきた。言葉は優しい音楽のように甘く響いてきた。
紗綾は胸がいっぱいで、どう答えていいのかわからない。