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ご主人様のため・・・
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ご主人様のため・・・〜みんなの思い〜-4

「良平くん落ち着いて!ちゃんと話聞かなきゃダメじゃない!」
「知らないって言ってんだろ?!!だいたい、お前が付き添ってたのになんで亜希が連れ去られてんだよ?!お前のせいだろ?俺に因縁つけんなよ!」
バッチ〜ン!!
思わず、奈歩が翔太の頬にビンタした。
「良平くんはね、亜希のお母さんが気疲れして、体調くずしちゃったからって寝る間も惜しんで亜希についててあげたの!!
それなのにちょっとトイレにたった隙に亜希がいなくなっちゃって、ずっと責任感じてたんだから!」
「奈歩!もういいから・・。」
「よくないよ!良平くんだけじゃない!亜希はみんなの大切な人なの!私だって亜希が居ないと寂しくてしょうがない!
亜希の家族だって、友達だって、心配して一生懸命探してるの。ただ、亜希に帰ってきて欲しくて。なのに、そんな誰のせいとか言わないで!!
悪いのは亜希をさらった人なの!亜希を心配してる人のせいになんかしないで!!」
泣きながら必死に奈歩は訴えたが、翔太は何も言わずに去っていった。

放課後―――――

「早坂くん!」
帰ろうとしている翔太の元へ奈歩がやってきた。
「朝は興奮して言い過ぎちゃってごめんね・・・。」
「いや・・・。」
「別に早坂くんが犯人だって疑ってるワケじゃないの・・・。ただ周りの人の思いを知ってほしかったんだ。」
「あぁ。俺こそ、デリカシーのないこと言ってごめん。」
「うん!じゃあね。」

しかし、やはり亜希を失いたくない・・・。でもここにいたら心が動いて、亜希を手放してしまいそうだった。

数日後――――

「引越し?!?突然どこへ?」
もし万が一、結衣になった亜希が家族や友人、そして恋人に接触してしまえば、記憶を取り戻すかもしれない・・・。それを避けるため。そして、自分の心が動かないようにするため・・・。
「国内。南の方だ!新学期から新しい学校に行こうかと思って、準備期間を多めに取ったんだ。」
「そうなんですか、じゃあ向こうは暑いんですね。」
「あぁ。もうすぐ夏だしな。」
そう・・・もうすぐ夏休み。結衣こと亜希は良平の手の届かない所へ向かっていた。

数週間後−−−−−

明日から夏休み。亜希がいない初めての夏休み。そして恋人になって初めての夏休みになるはずだった・・・・。良平なりに亜希を喜ばそうと計画を立てていた。それなのに・・・
「はぁ〜・・・」
亜希を探し続けているものの、見つからない・・・。《空港で亜希を見掛けた》なんて話もあり、亜希が日本にいるのかも、海外にいるのかもわからず、途方にくれて、リビングのソファーに仰向けに倒れ込み、訳もなくただただ天井を眺めていた。
プルルルル・・・プルルルル・・・
電話が鳴る。今日は終業式で、午前中に学校を終えた、良平しか家にいない。
『亜希かもしれない!!』
電話のたびにこう思ってしまう。
ガチャ
「はい!深谷です!!」
「おう!良平か?なんかテンション高けぇなぁ!!」
「なんだ克紀・・・」
電話をかけてきたのは良平の従兄弟、上村克紀(うえむらかつき)。高2。見かけはチャラチャラしてるが、中身はまじめで、テンションは常に高い。小2までこっちに住んでいたが、引越して今は沖縄に住んでいる。
「なんだとはなんだ!!それで?今年はいつ遊びに来るんだ?」
「あぁ・・・今年はそんな気分じゃないんだ・・・」
夏休みになると東堂家と深谷家の子供のみで、沖縄の克紀の家に遊びに行くのが、毎年の恒例行事。
しかし今年はとてもそんな気分になれない・・・。
「気分ってなんだよ気分って!!あっ!亜希元気か?いや〜今年も亜希に会うの楽しみだなぁ・・・亜希ますます可愛くなってんだろうなぁ!」
この言葉を聞いて気付いただろうが、克紀もまた初恋の相手が亜希であり、今でも亜希のことが好きなのである。
「おっ!!そういえばこっちでさ、亜希にそっくりな子見かけたんだよね。話し掛ける前に見失ったんだけど・・・」
「まっまじか!!!!!」
勝手にしゃべり続ける克紀の言葉を、半分聞いて半分聞き流していた良平は、突然のことにびっくりし自分の予想より大きな声を出してしまった。


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