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バレンタインのご褒美
【OL/お姉さん 官能小説】

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1ヶ月遅れのお返し-1

あれは、夢だったんじゃないかと思いこもうとしている。
バレンタインデーの夜、エレベーターの中で起きたことも、その後のことも。

翌朝。
目が覚めた私は、村上和馬の腕の中にいた。
お互い全裸で、私のカラダの至る所に村上が付けた印が残っている。
壁にかかった時計を見ると、5時半。
起こさないように村上の腕の中から抜け出すと、申し訳ないけれど勝手にシャワーを借りた。
まだ必要以上にぬかるんだソコが自分のカラダとは言え腹立たしい。
別にセックスをもったいぶるような年齢じゃない。
とはいえ、同僚と簡単に関係を持ってしまうなんて。
村上に恋愛感情を持つこと自体、どうかと思っていたのに。
そんな雑念を振り払うかのごとく、熱いシャワーを浴びて身支度を整える。

部屋に戻ってもまだ村上は穏やかな寝息を立てていた。
抜け出した私の代わりに布団を抱きかかえるようにして。

でも、忘れよう。

オートロックだし、それほど経たないうちに村上も目が覚めるだろう。
未練がましい私は眠ったままの村上の頬にキスをして彼の部屋を後にした。

あれから2ヶ月。

社内で何度か村上を見かけたけれど、関わりはない。
うちの部署と村上のいる企画課は何の交流もない。
もちろんプライベートな連絡先なんてお互い交換していない。
きちんと避妊してくれたから来るべきものはちゃんと来たし、連絡を取る必要もない。
来るべきものが来なかったとしても、連絡はしなかったと思うけれど。
おかげさまで子供を一人で産んで育てていけるくらいの資産は貯めてきたつもりだし。
村上が私のカラダに付けた沢山の印はもう跡形もない。

なのにふと気づくとあの夜を思い出してしまうのだ。
まだ決算期や年度末、年度初めの慌ただしい時期はよかった。
少なくとも仕事中はそんなこと考えている暇も余裕もなかったから。
ただ、あの下りのエレベーターには乗れなかった。
一種の、トラウマ。
別に閉じ込められたことが、ではない。
必要以上に村上を思い出してしまう自分が怖かった。

あっという間に咲いた桜は意外に長持ちしたけれどもうすっかり葉桜になってしまった午後2時。
外出先から戻った私はロビー階で上りのエレベーターを待っていた。
こんな時間だから、人は少ない。
下りてきた人と会釈を交わして乗り込むと、私一人だけで閉じるのボタンに手を伸ばした時。

「乗りますっ」

聞き覚えのある声。
まさか気づかないふりをして閉じるボタンを押すわけにも行かず、開くボタンを押すと慌てて乗り込んできたのは村上だった。

「何階ですか?」

何事もなかったように尋ねると、ドアがしまった瞬間抱き締められた。

「やっと会えた…」

「ちょっ、ちょっと」

何考えてんだ、この男。
慌てて振り払おうとしても、離してくれない。
屋上階のボタンが押される。
自分のフロアを押そうとしても、押させてもらえない。

「5分だけ、時間もらえませんか?」

「…わかったから離して」

イヤと言わせない強い視線に妥協すると、私を抱き締めていた腕が離れた。


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