返却-6
早くここから離れないと。
頭の中はほぼ真っ白になりながらも、その気持ちばかりが先走って焦りを感じていた。
先程まで手に持っていた問題集やルーズリーフ、先生がくれたプリントを震える手でかばんにしまい込もうとする。
だけど、焦る気持ちにかじかんだ体が追いついていかず、問題集をバサッと床に落としてしまった。
同時に、さっきもらった数学のプリントが広がるように落ちてしまった。
問題集にプリントの束を挟んでしまったのが仇となった。
……最悪! いかにも動揺してますってバレバレじゃん。
私はプリントを拾うため、急いでしゃがみ込む。
そこら中に広がって落ちてしまったプリントが視界に入ると、自分のグズっぷりを呪いたくなった。
もう、早く教室から出て行ってよ。
間抜けな自分を見られるのが恥ずかしくて、プリントを拾い集めながら、少し離れた所で立っていた制服のズボンをじろりと睨みつけた。
やつあたりと自覚していても、やり場のない気持ちを彼の足元にぶつけるしかなかったのだ。
すると紺色のチェックのズボンの主は、ゆっくりこちらに向かってきて、私の目の前まで来ると、その足をかがめて私のプリントを一緒に拾い始めた。