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ロイター板と跳び箱
【青春 恋愛小説】

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ロイター板と跳び箱-2

一人、傘が不要な人物に心当たりがある…。
いることにはいるんだが、アイツには頼めない。
いや、正確には頼みたくない………。
自分でも、なんでそんな意地になるのかが、この時は分からなかった……。

今年のバレンタインも、他のコにはチョコをねだれたのに、アイツとは会話すらも出来なかった…。

もともと貰えないのは知っていたってのもある。
アイツには好きな人がいて、その人にどうやってチョコを渡すかとか、どんなチョコがいいかとかを、バレンタインの前日に俺がアドバイスしていたから…。
そして、その結果は……。



俺は、あの時のアイツの笑顔を思い出しながら、廊下をトボトボと歩いていた。すると、背中をポンっと叩かれたので、後ろを振り返った。
「どうしたの〜?和也〜。暗いじゃん!?いつもニコニコしているアンタがさ〜」
ジロジロと珍しいモノでも見るような目付きと、今考えていた、アイツの笑顔がそこにあった。

「あぁ加奈…。まぁ色々と考え事をさ……」
「えぇ!!アンタが!?……これは季節外れの雪でも降りそうだ……」
ひどくない?
ねぇ、ちょっとひどくないですか??俺が考え事するのって、天変地異の前触れ?
「いやいや、俺だって悩みぐらいあるよ」
「へぇ〜〜アンタがね〜。いつもニコニコ能天気そうなのにね〜…」
言わせておけば…。
でも、悩みの原因はお前だよ。なんて口が裂けても言えないしな……。

「じゃあ、この間は私の相談を聞いてくれたから、今度は私が和也の悩みを聞いてあげるよ!」
ほら、来た。
こうなる事は予想が付いていた。
さぁ、なんて嘘を付こう………。

「ここじゃ言いにくいから、場所変えてもいいかな?」
少しでも嘘を考える時間を稼ぐために。
「いいよ。じゃあ中庭に行こっか?」





 加奈と俺は、中庭に向かうための階段を下りていた。
最後の一段を下りると、角から教科書を片手にした男が現われた。
それを見付けた加奈は、
「あ、真吾君!」
と大きな声で言うと、パタパタとその男の前へと駆けて行った。

加奈がバレンタインチョコを渡した相手。それが真吾君と呼ばれる人。

楽しそうに喋る加奈。
今まで一緒にいた俺の存在など忘れて……。
これで、嘘を付く必要がなくなる。
このまま居なくなっても分からないだろうから……。



「さてと、邪魔者は消えるか……」

何故かもやもやとする自分に、そう言い聞かして、その場を離れる事にした。

教室に戻るため、下りた階段を今度は上ろうと一歩を踏み出す。

「どうしてなのっ!?」

突然の叫び声に、ビクッとした足は、段を踏む前に空中で止まった。

「…っるせーな!それが嫌なんだよ!!」


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