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ミス・フェロモンを倒せ!
【コメディ その他小説】

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手品対決?-1

次の日、俺は雌狐どもに呼び出されたんだ。
ヨッシーやサッシーのことじゃないぞ。
尾志谷麗子と3人の仲間達……って感じの連中のことだ。
「天野君……って、あなたのこと? 私、あなたの従姉妹のナナミさんに話があるんですけど、会わせてくれませんか?」
尾志谷麗子は俺の正面に立って、15cm作戦に出て来やがった。
えっ? それはどういう作戦だって? 男を篭絡する雌狐どもの手品だよ。
つまり男の体に15cmまで近づくんだよ。手を伸ばせば抱きしめられる距離だな。
そういうときは大抵胸のラインが綺麗に見える服を着て来る。
ブラジャーも乳房がツンと尖るようなタイプのものをつけたんだ。
なぜかと言うとそれだけ接近して男を見上げるから、胸を張るだろう?
いやでも胸が前に出て男に迫るんだよ。
そしてそれだけ近づくと心理的にも恋人になった気分になるが、物理的にも体温みたいのが輻射熱として伝わって来る。
もう男はメロメロになるって訳よ。
えっ、なんでお前はそういうこと知ってるんだって? 
それはなあ、俺には3人の雌狐の姉貴がいるからだよ。
男を篭絡するにはどうすれば良いかと日々研鑽を重ねているところを間近に見て育ってきたから、俺には女が使う手品の種は大抵わかってしまうのさ。
って自慢してる場合じゃない。
それをあの雌狐共は四面楚歌バージョンでやって来やがった。
つまり正面の尾志谷の他に、左右と背後に雌狐の仲間が囲んだんだよ。
あいつらにしてみれば完全包囲作戦だな。女に弱い男ならハーレム状態だって鼻の下を伸ばすところだ。
だが、俺は……説明が遅れたが……女アレルギーなんだ。
正確に言うと雌狐アレルギーだ。雌狐……つまり女の武器をプンプンさせている女が近づくと、胸が気持悪くなってくるんだ。
うまく言えないが果物が腐った匂いを嗅いだような感じになる。
同じ女でもヨッシーやサッシーには感じない。あいつらには雌狐要素がないからだ。
だから俺は、バスケットのフェイントの動きで体を斜めにして、その包囲網を脱出したよ。
追いかけてこようとする雌狐共に一喝したね。
「近づくな! 気持ち悪くなる。俺の従姉妹に用事なら、直接言えば良い。どこにいるかは俺にはわからない。
俺はあいつの番人でもマネージャーでもない。そういうことだ」
そう言って俺は背を向けて歩き出したね。
その背中に尾志谷がさきほどとは違う尖った口調で突き刺すように言ったんだ。
「あんたの従姉妹の雌豚に言っといて。人の男にチョッカイ出すとひどい目に合うって!」
俺は立ち止まったね。そしてゆっくり振り返って尾志谷を見てやった。
「つまり女として負けを認めたんだな? そうだな……あいつに比べればお前はかなり落ちる。それは俺にもわかる。
これ以上悪あがきするのはやめた方が良いぜ。そういうのを恥の上塗りって言うんだ」
そう言って俺は足早に立ち去ったぜ。言っておくが、この足早がキーワードだ。
決め台詞を言ったら長居はしないことだ。相手はもう逆上してるはずだから、何をしてくるか分からない。
案の定、金切り声を立てて何かしかけてくる気配がしたから、俺は俺の手品を使って人体消失をしてみせたよ。
っていうかさっさと姿を消したってことだ。



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