解放-8
「しかし、アンタも大したもんだな……今の話聞いてビビらねぇの？」
こうやって話ている相手は暗殺者だし、ゼインは魔物でポロも魔物かもしれない。
「ん〜…それはそれ、これはこれかな？」
海の男は何でもドーンと受け入れる器が無いとね、とケイは胸を叩いた。
その頭の上でクインも同じ動きをして、スランは思わず笑う。
「面白れぇヤツ」
「誉め言葉だよな？」
「勿論」
スランは答えながらそろそろ良いか、とドアを叩いた。
「おい。終わったんなら行くぞ」
「おうっ！！」
部屋の中から返ってきたゼインの声は、何もかも吐き出してスッキリした良い声だった。
拷問部屋に鞭の音が鳴り響く……うっすらと開けた目の前を液体が飛び散っているのが見えるが、灰色の世界はそれが赤い血なのか別の何かなのかは教えてくれなかった。
「はぁ……はぁ……いい加減にしろよ、カリオペ」
鞭を振ってるのはシグナーの中でもトップクラスの兄。
兄は息を切らしてカリオペの頬に触れる。
「答えてくれよ……そしたらお前を掻き乱している何かを壊してやるから……そしたら、また戻れる」
兄は間違っている……戻りたく無いから答えないのだ。
「カリオペ……俺と結婚しよう？そしたら次期頭領の妻だ……誰にも文句は言わせない」
兄はカリーと唇を合わせて舌を潜り込ませた。
この兄は次期頭領……結婚したらシグナーでカリーに逆らえる者は居ない。
「欲しいモノは何でもくれてやる。だから……」
「……イヤ……」
唇を離してまくし立てる兄にカリーは小さく答えた。
「……兄さんは分かってない……私…何も要らないの」
欲しいのはゼインだけ……だけど、彼の心は緑の瞳に捕らわれている……だから何も要らない。
「……ッ！！」
兄はバッと踵を返すと、拷問部屋に置かれている棚の引き出しを開けた。
その中から取り出したのは注射器。
「なら……欲しいって言わせてやるよ」
兄は険しい顔でカリーの首に注射針を突き立てた。
「っぅ」
体内に入ってくる液体にカリーは眉根を寄せる。
「……ぁ……ああ？」
ズクンと子宮が跳ね上がり、カリーの口からうめき声が上がる。