解放-7
「ポロはまだ1回だから耐性をつけている状態だ。だから、まだ人間だと思う」
怯えて当然だ、とゼインは腕を元にもどして苦笑した。
「違う……違うの……」
ポロはゼイン達が居ない間、ゼビアの魔導師とファンの召喚師姫に会った事を話す。
「魔導師様は『封印』の魔法がかかってるって……姫様は私が二重に見えるって言ってた」
それは普通の人間にはあり得ない事だ。
「……いきなり核入り飲ませたって事か?」
ゼインは口に手を当てて考える。
自分が逃げてから8年も経っている……技術が上がってても不思議じゃない。
「……私…も……魔物になったの…かな……」
不安気に震えるポロをゼインは遠慮がちにそっと抱き締めた。
「大丈夫だ。実験が成功したとしたら奴がお前を手放す筈がない」
ゼインの腕の中でポロの震えが徐々に治まる。
「何とかするから大丈夫だ」
全く根拠は無いが、本当に大丈夫だと思えるから不思議だ。
ポロはゼインの身体に腕を回してきゅっと抱き返す。
「その前にカリー助けなきゃ」
「ああ、そうだな……」
ゼインの腕に少し力が入り、ポロもそれに答えるように強く抱く。
「ねぇ……カリーとの話も聞かせて」
「へ?」
「話してくれないなら、カリーにバラ……」
「はい!話します」
ゼインはあの男から逃げた時の事と、その後カリーに会った時の事を包み隠さず話す羽目になる……カリーを『天使』だと思っているという、こっ恥ずかしい事まで全部。
「……なんかご馳走さまって感じだな」
「ヤる事ヤッてるクセに青臭くて寒いわ」
部屋の前でドアに張り付いて聞き耳を立ててたスランとケイは、ゼインの話に薄ら笑いを浮かべていた。
「魔物とはね」
だから、カリーを自分のモノにする事に躊躇していたのか、とスランは納得する。
それなら『喰っちまうかもしんねぇ』発言にも頷ける。
しかし、カリーは死ぬ覚悟で自分と一緒に居たと分かった時、吹っ切れた……ってところかな、とスランはコリコリと頭を掻いた。
「損な役回りだな、スラン」
ケイはドアから耳を離して、そのドアにもたれる。
「そうでも無いから苛つくな」
スランの答えにケイは喉を鳴らして笑った。
そんなケイをスランは呆れたように見る。