解放-20
「え?嘘っ?!やだ、ポロったら声出るの?!」
カリーはポロの肩に手をついて彼女を引き剥がし、真正面から顔を覗き込んだ。
ポロは流れる涙を拭きもせず、コクコク頷く。
「えーっ?!凄い!良かったぁ〜」
カリーは再びポロを抱き締めてぎゅうぎゅうにする。
「でも何でぇ?」
枷はそのままだし、外見的には何も変わっていない、とカリーは首を傾げた。
「ゼインに犯されたの。その時に」
ビシッ
ポロがあっさり言い放った言葉に、カリーが固まる。
ギギギと音が鳴りそうなぐらいゆっくりと振り向いたカリーの動きに合わせて、獣はゆっくりと横を向いた。
「ゼ〜イ〜ン〜?」
ゼインと呼ばれて獣は、獣のクセにダラダラと冷や汗を流す。
そう、この獣はゼインなのだ。
カリーを助ける為に、魔物の力を解放したゼイン。
そのゼインの口の端から、一本の腕がブランとぶら下がっていた。
「ああっ!やだ!!忘れてた!ゼイン、スラン出して!!」
カリーの悲鳴に、獣のゼインはハッとして口を開ける。
ズルズル ベシャ
スランはゼインの口の中から、血の混じった大量の唾液と共に吐き出された。
「お・ま・え・ら・な〜」
ギットギトに濡れたスランは、腕を押さえたままカリーとゼインを睨む。
カリーは両手を組んできゅるんとした瞳をパチパチさせて誤魔化し、ゼインは長い尻尾をパッサパッサと揺らして見せた。
「お……ぼえとけ……」
スランはそう言い残すと、ぐらりと地面に倒れる。
「きゃあっ!スラン!」
再び悲鳴をあげたカリーの声を聞きながら、スランは妙な充実感を感じつつ意識を手離した。