解放-14
「何?」
「ここの場所と、合言葉を知っている所在不明の人間を外に出すつもりは無いんでな」
頭領は顎髭を撫でながらニヤリと笑う。
「だよな」
スランはぐるりと自分を囲んだメンバーを見回した。
頭領とバーテンダーは参加しないとしても、相手は6人。
(早くしろよ、チビぃ〜)
心の中で舌打ちしたスランは、腰からショートソードをすらりと抜いた。
ガリ…… ガリ……
「?」
意識が朦朧としていたカリーは、妙な音に気づいて顔を上げた。
まるで壁を削るような音だが、この拷問部屋は最地下にあるひとつ部屋で壁の向こうは土だ。
いったい何だろうと不思議に思いつつ首を巡らせる。
ガ…… ガガ……
「……チッ……おい、構えとけよ」
妙な音の後、舌打ちとあり得ない聞き慣れた声。
「……え?」
カリーは幻聴じゃないかと、自分の耳を疑う。
ガゴンッドゴッ
ガラガラッ
いきなり右側の壁が壊れ、レンガが派手な音をたてて崩れ落ちた。
もうもうと立ち上がる土煙の中から、灰色の毛に包まれた腕がにょきっと出てくる。
「ひっ」
いったいどんな化物だと身構えたカリーの耳に届いたのは、さっきの聞き慣れた声だった。
「ぺぺっ……あ〜…くそ……爪割れたな」
腕の次に出てきた身体は、見慣れた大好きな身体。
「ゼ…イン」
幻聴の次は幻覚かと、カリーは目を瞬かせる。
「よぉ。お前、緊縛プレイ好きだな」
カリーを見つけたゼインは、悪戯っ子の顔で笑って瓦礫を掻き分けて出てきた。
「へ?え?ゼイン?ホントに?」
カリーは近づいてくるゼインが未だに信じられない。
「他に誰が居るってんだよ?」
そう言いながら土埃を払うゼインの腕は、相変わらず灰色の毛に包まれていて、爪も黒々と長い。
カリーの視線に気づいたゼインは、その腕を上げてニカッと笑った。