スタジオにて-8
しかし、彼は皆に語らせ、
彼らが言い尽くした後に、彼なりの独特の発言をするのだろう。
参加者たちは彼の独特のこういう発言を期待しているのかもしれない。
若いまさるは、ここで負けてはいなかった。
その風貌からは想像もできないようなしたたかさがあるようだ。
「その娘さんはいくつなの?」
「ちょうど十八歳ですよ、それがどうしたんです? 」
「じやぁ、その娘がセックスをしていると、考えた事ある?」
「無いわよ、そんな娘じゃないし・・」
「それは甘いなぁ、いまどきの女の子が処女だっていう考え方は古いや」
「そ、そんなことないわよ、うちの子に限って」
「そうそう、親っていつもそういうこと言うんだよね、どんな時でも娘を信じている、
それが親の愛って言えば、それで済むと思ってる、マジで信じちゃってさ」
「そ、そんな・・・」
「じゃあ、もう一つ聞いていいっすか?」
「いいわよ」
美紀子という女の顔が紅潮して、その興奮度を物語っていた。
始め軽い気持ちで彼に質問をし、軽薄な気持ちをたしなめたかったのだが、
その若者は強かだった。
それを少し後悔をして、無意識で下唇を噛んでいた。
「奥さんは、旦那と結婚した時に、処女だったの?」
「そ、そんなこと、ここでは言えないわよ」
「どうして?そんなに恥ずかしいことかな?セックスって」
「そういうことを人の前で話をするように、私達は教育を受けていませんからね」
「この座談会の趣旨は、どんなことでも素直に話すことが目的じゃないかな、
俺はそのつもりで参加したんだけどな」
「わかったわ、では言うわね、結婚をする前に付き合ってた人はいたわよ」
「それでセックスは? 」
若者は執拗にこの女に食い下がっていた。
周りの参加者達は、固唾を飲んでじっと興味の眼で、
この二人のやり取りを見つめていた。