思い出-7
のんびり歩いて帰ってきて、自分の部屋のベッドに倒れ込んだときには二時を過ぎていた。
寒さで痛くなった耳を手のひらで包んで暖める。
寒い中にいると、頭がガンガン痛くなるので、ベッドの上で仰向けになりジッと目を閉じた。
目を閉じると、補習での土橋くんの姿がまじまじと思い出された。
彼はいつも通り、友達とワイワイやって楽しそうだったな。
友達からも人気があって、可愛い彼女がいて、楽しい高校生活を送っている。
それがアイツの日常だ。
そんな彼の日常に、私みたいな地味な女が入り込むこと自体が間違っていたのかもしれない。
きっと、私にとって彼と過ごした時間が、あまりに新鮮で楽しかったから、失ったときのギャップに耐えられないだけなんだと思う。
彼は、私とはもともと住む世界の違う人だったんだ。
ふと入れ替わるように歩仁内くんの笑顔が浮かぶ。
土橋くんほど目立つ存在ではないものの、真面目で生徒会の仕事も嫌な顔せずに引き受けるので、先生方からも評判がいい。
無愛想な土橋くんと違って、誰にでもニコニコ優しい歩仁内くん。
“歩仁内くんなら好きだと言っても不自然じゃないから”それだけの理由で彼を好きだと土橋くんに嘘をついた。
実際、彼はとても優しくて、私の話を聞いてくれるし親しくなればなるほど好きになっていくだろう。
……土橋くんがいなければ。
歩仁内くんが彼氏だったら、と想像することは何度もあった。
きっと楽しいだろうし、手を繋いだりしただけでドキドキが止まらないんだろう。
でも、なぜかそういう想像をするだけで罪悪感が湧き上がり、すぐにもう一人の自分がそれを打ち消す。
なんで罪悪感が起こるのか、それは誰に対しての罪悪感なのかいつもわからないまま終わる。
今日もその答えを探そうとしているうちに、私はウトウトと眠りに落ちていった。