思い出-6
なんとか押し込むようにラーメンを食べ終えた私は、考え事してるときに美味しいものを食べるのはやめようと思った。
お店を出ると、やけに日差しが眩しくて。
雪解けのアスファルトには泥まみれの茶色い雪がシャーベット状になって残っている。
このままアスファルトに残る雪が溶け、自転車に乗れるなあと思えばまたドカッと雪が積もって、を繰り返し少しずつ春になるのだ。
「さて、これからどうする？ カラオケでも行く？ オレん家でも来る？」
大山くんが私と沙織の顔を交互に見た。
土橋くんと口をきかなくなってから、こうして三人で放課後を過ごすことも増えて、ついには大山くんの家におじゃまするまでになってしまった。
最初は二人に混ざることに抵抗があったけど、沙織や大山くんの気遣いから私も次第に気を許せるようになった。
それでも一応は気を遣って自分だけ早く帰ったり、誘ってくれても遠慮することもあるけれども。
「私さ……、今日はなんか疲れたんだよね。だから遠慮しとくね。また今度誘って」
今日、私がこんな風に言ったのは、気遣いとかじゃなく本心だ。
土橋くんと同じ補習クラスになり、微かに嬉しい気持ちと、彼に無視されている（というより眼中にない）と言う現実と、空気が読めない歩仁内くんの存在が、変に私の神経をすり減らしたから。
気をもんでいるのは私だけ、とは思うけれど、同じ教室で土橋くんの存在を意識すればするほど、なんとなく彼の鋭い視線が背中に突き刺さって責められているような気がした。